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投動作とは「ボールに方向とスピードを与え、空中に発射させる運動」|140キロ投手育成論(1)

2023.8.28

2年半(880日)という限られた時間で、投手のパフォーマンスを向上させる。
140キロは努力で目指せる時代!「140キロ」をひとつの目安に定め、その考え方やトレーニング方法を紹介している本「880日で作る140キロ投手育成論」(竹書房)。この本の第一章「投動作を極める」の一部を紹介する。ぜひ参考にして欲しい。


第1章―投動作を極める―

投動作とは「ボールに方向とスピードを与え、空中に発射させる運動」

「投動作」を言葉で表現するとしたら、「投擲物(ボール)に方向とスピードを与え、空中に発射させる運動」と定義付けることができる。

少々回りくどい表現になるが、カギになるのは「方向」と「スピード」だ。
特にピッチングにおいては、「18.44メートル先のストライクゾーンに投げ込む」という絶対的な条件が発生する。どこに投げてもいいのであれば、どの投手ももっと球速が上がるが、ピッチングとはそういうものではない。狙った「方向」に投げるコントロールが求められるのだ。

内野手や外野手であれば、基本的に野手が捕れる範囲に投げることができれば、プレーは成立する。「だいたいそのあたりのコントロール」でも通用するのが野手。ショートバウンドを投げたとしても、ファーストがカバーしてくれればアウトは取れる。しかし、投手の場合はそうはいかない。これが、ピッチングをより難しいものにしている。

スピードに大きく関わってくるのが、腕の振りの速さである。腕を振る速度が100キロにもかかわらず、投球速度が140キロに達することなど、科学的には考えられないことだ。140キロのストレートを投げたければ、それ相応の腕の振りの速さが求められる。

だからといって、全力で腕を振ればいいかと言えば、決してそうではない。
「腕を振れ!」という指導者の声かけをよく耳にするが、腕は“振るもの”ではなく、“振られるもの”である。下半身から生み出したエネルギーが、体幹から上半身、そして最後に腕や指先にまで伝わることで、勝手に振られていく。「自らの力で腕を振ろうと思っているうちは、140キロの球速は出ない」と、理解しておいてほしい。
 

「送球」と「投球」の違いは「プラス発進」か「ゼロ発進」

野手が投げる球は「送球」(スローイング)、投手が投げる球は「投球」(ピッチング)と表現される。
野手の投げミスは「悪送球」で、投手の場合は「暴投」となる。打球を処理した投手が、一塁に高投した場合には、「悪送球」。つまりは、守備者となった時点で、「投球」ではなく、「送球」に変わる。

では、動きのメカニズムで考えたときに、送球と投球の違いはどこにあるのだろうか。

もっとも大きな違いは、投手はステップが踏めないことだ。たとえば、内野手であれば、打球に合わせて足を運び、捕球後もフットワークを使ってファーストに送球する。捕球時の体勢が悪ければ、足を使って立て直すことができるのだ。地肩が強くない選手であっても、足で勢いを生み出すことによって、強い送球をすることが可能となる。

投手はどうか――。
言うまでもないことだが、プレートに軸足を着けた状態から前足を踏み出し、一歩でエネルギーを生み出さなければいけない。野手のように助走を付けることができないのだ。言い換えれば、静から動の「ゼロ発進」が投手で、動から動の「プラス発進」が野手。肩の強い外野手がマウンドに上がったときに、思ったほど球速が出ないことがあるが、これは静止した状態からの力の出し方に課題があると考えられる。

18.44メートル先のコントロールも、この一歩の方向性、つまりは下半身の使い方によっておおよそ決まっていく。踏み出す方向性がずれていれば、コントロールがずれるのも当たり前のことだろう。
ボールを投げることは同じであっても、そのメカニズムには大きな違いがあることを頭に入れておいてほしい。


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