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【甲子園での女子決勝迫る】神戸弘陵は最終調整。全日本選手権では社会人相手に勝利も

2021.8.19

兵庫県丹波市のつかさグループいちじま球場で開催された女子硬式野球選手権大会準決勝で、京都両洋に2-1の劇的勝利を収め、決勝へコマを進めた神戸弘陵。史上はじめて甲子園で開催される決勝戦は、8月1日の準決勝から約3週間後という変則日程だ。決戦の23日までの期間、決勝へ進出した両校はどのようにモチベーションの維持を図り、調整しているのだろうか。


石原康司監督、6度目の甲子園「自分たちの力を出すために、力を抜いて楽しんで欲しい」

全日本選手権出場で試合の感覚を維持

チームは準決勝から6日後、愛媛県松山市の坊っちゃんスタジアム、隣接しているマドンナスタジアムの2球場で開催された『伊予銀行杯 第17回全日本女子硬式野球選手権大会』に出場した。

この大会は全国の高校・大学・企業チームやクラブチームが参加する、いわば『女子硬式野球の頂上決戦』だ。高校・大学・企業チームやクラブチームの各ステージで、大会参加基準が満たされたチームにのみ参加権が与えられ、高校の場合、春の選抜ベスト8に名を連ねた学校のみ出場が許される。

神戸弘陵は今年の選抜でベスト4の成績を残し、見事7年連続7回目の出場権を得ていた。


全日本選手権でも明るい神戸弘陵の笑顔が見られた。

初戦からクラブチームのハナマウイ(東京)と対戦し、2-0で勝利した。初回に先頭打者の信貴友郁(3年)が初球を振り抜き左前打で出塁すると、「2アウト3塁、ここで還さないと四番じゃないなと思った」と振り返った正代絢子(2年)の左越適時三塁打で先制。2回にも1点を追加し、6回には五番の國富瑞穂(2年)が中越三塁打で出塁するなど終始優位なゲーム展開を作った。投げては日高結衣(2年)が完投した。

史上はじめて男子・女子硬式野球部それぞれで甲子園出場を果たした石原康司監督は「今回の選手権大会は決勝までの期間が空いてしまうけど、全日本選手権に参加することでゲーム感が養えてありがたい。対戦相手も社会人でレベルが高いですしね」と話した。選手権大会準決勝後にも「日程が空く分、(甲子園でのプレーが)楽しみな期間も長くなる」と笑顔をみせていた。


選手権大会準決勝でも先発した日高。

全日本選手権では惜しくも2回戦で東海NEXUS(愛知)に2-3で敗退したが、夏の決勝戦へ向けて士気は高いままだ。

それぞれの想いを胸に 甲子園で恩返しを

全日本選手権で五番を務めた國富は、石川県の強豪私立・日本航空石川の内野手で甲子園出場に貢献した兄・海成をもち、父・一男さんは神戸弘陵の男子硬式野球部OBだ。一男さん在学中は石原監督が男子硬式野球部でコーチを務めていて、親子そろって同じ師を仰ぐ。小学6年生のときに母・美保子さんが肝不全で急逝して以降、父が姉二人と兄一人と自身を男手ひとつで育ててくれた。感謝の気持ちを野球にぶつけ父が果たせなかった甲子園出場の切符を掴んだ。


父への恩返しを甲子園で叶えたい國冨。

「(母が亡くなってから)父が送り迎えもしてくれて、たくさん迷惑かけてきました。甲子園が決まったときに父が泣いてくれたんです。いつも応援してくれた父へ、優勝して最高の恩返しができたらいいなって思います」。

恩返しをしたいのは家族へだけではない。個の能力が高い2年生がしっかり力を発揮できるよう、優しくサポートし、厳しく牽引してくれる3年生を「最高のカタチで送り出したい」とも話した。

切り込み隊長を務める信貴は、中学時代に関西女子ボーイズで一緒にプレーした福知山成美の副主将・坂上天海(3年)からバットを託された。福知山成美は準々決勝で、神戸弘陵が下した京都両洋に敗戦している。「その子のためにも頑張りたいし、どんなカタチでもいいので勝って、自分が良かったじゃなくチームがよかったと思える結果にしたいです」と、旧友への決意とチームへの恩返しを誓った。


切り込み隊長を務める信貴。

22年ぶりにかえってくる甲子園監督

「甲子園での決勝が決まった翌日から二日間はオフだったんですが、(選手それぞれが)浮かれている部分はあったと思います。でも甲子園に出ることが目標ではなく、日本一が目標。浮かれてないで気を引き締めてみんなで頑張っていきたいです」。

主将の小林芽生(3年)はそう話し、チームはまた選手権大会決勝へと気持ちを切り替えた。8月11日の昼から14日までは盆休みとし、各選手それぞれが感染症対策をしっかりととった上で女子寮から帰省した。「会うのは親戚くらいにしてもらって、気持ちを落とさないようにLINEで声掛けをしようかなと思います。1日400本の連振りをするように声をかけようかな…」全日本選手権を終えたばかりの小林は、まだ休暇中の過ごし方について固まっていないようだった。今大会最注目投手・島野愛友利(3年)を有し、高い注目度とプレッシャーに強張っていた心身をリフレッシュする期間になるだろう。


書道師範の腕を持つ石原監督の字を背に刻んだスローガンTシャツ。


石原監督は甲子園での試合について「すばらしい球場、すばらしい環境で、観客を味方にする野球をできたらいいなと思います。全力疾走して、元気を出して、すべて楽しんでいる雰囲気で。カバーリングなどの無駄に見えるけど大事なプレーもしっかりとやる。選手たちには自分たちの力を出すために、力を抜いて楽しんでもらえたらなと思います」と話した。監督としては4度目、コーチ時代を含めると6度目の甲子園。1999年以来、22年ぶりに名将が聖地へかえってくる。

(取材・文・写真/喜岡 桜)

※女子野球の決勝戦は8月23日(月)17時より試合開始予定(2021.8.20現在)



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