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【仙台育英】この秋、東北大会制したチームに須江航監督がチャレンジを求める理由

2021.1.4

東北⼤会を連覇するなど、この秋も安定した強さを発揮。出場濃厚なセンバツでも、どんな戦いを⾒せてくれるかと大きな期待を集める仙台育英。チームを率いる須江航監督に、秋の戦いを振り返ってもらいながら今のチームに求めることを尋ねると、返ってきたのは〈チャレンジ〉という⾔葉だった。チームのピークをさらに先、さらなる⾼みへと持っていくための、強豪の取り組みやマインドセットを聞いた。


「ピッチャーを含めた守備のクオリティはある程度、求めていたレベルに到達できた」

11月の終わり、あっという間に日が落ちていく秋の夕暮れ。人工芝の専用球場では、選手たちが4班に分かれ、一心不乱にバッティング練習とフィジカルトレーニングに取り組んでいた。ノックや実戦練習が行われるような気配はない。一打一打、打球の質と行方をしっかり確かめている選手もいれば、フォームを試行錯誤しているような様子の選手もいる。ひたすら打っているだけのように見えるが、各選手、何かしらのテーマを持っているのだろう。

秋季東北大会を2年連続で制し、来春のセンバツ出場が確実視されている仙台育英。全ての公式戦を終え、アウト・オブ・シーズンは目の前。練習は既にオフ仕様になっているようだ。

「優勝した東北大会は、求めているものができたことがあれば、全くできなかったこともありました」と話すのはチームを率いる須江航監督。

「できたこと」はディフェンスだ。「ピッチャーを含めた守備のクオリティはある程度、求めていたレベルに到達できました。特に投手は起用方法などベンチワークも含め、新チームになってから取り組んできたことがしっかりできたと思います。野手の守備はレギュラーと期待した選手がケガでメンバーを外れたこともあり、そこは到達できませんでしたね。ただ、その分、チーム全体の底上げにはつながったと思います」

「優勝したいし甲子園にも出たい。だけど、そこにチャレンジがなければ」


好調に映った攻撃⾯もさらなる進化を⽬指す。


「できなかった」のはオフェンスである。とはいえ東北大会では4試合で37得点。準決勝の花巻東戦こそ1対0の辛勝だったが、その他の3試合は大差の勝利だった。

「はい。なので成功か失敗かで失敗、というと誤解を招きそうなのですが、結果の全てを否定するわけではないんです。とても表現が難しいのですが、やっぱりゲームになると目先の結果を取り、勝ちに行ってしまった。県大会と東北大会を勝ち抜く野球を、選手たちがオートマチックに選択していたんですね。それを成功と呼んでいいのかな、と」

例を挙げれば無死一、二塁で打者にフリーヒッティングのサインを出したのに、初球から進塁打を狙い成功させたようなケースだ。ベンチとしては、フリーヒッティングなのだからヒットや長打を狙ってもいいと考えているのにもかかわらず、である。

「追い込まれてから進塁打を狙うならまだしも、最初から進塁打を選択してしまう。もちろん、試合はセンバツにつながる結果を求めるのが第一ではあるので、叱ることではないんですよ。むしろ賢い選択ともいえます。一見、美しいプレーなのかもしれません。だけど、それだけでは……」

つまりは、秋の段階ではもっと思い切って冒険してもよかったのではないか、という思いが須江監督にあったのだ。目先の勝利ではなく、選手としての成長や日本一、あるいは、さらにその先にある「世界」を考えれば、それ以外の選択もあったのではないか。よりスケールの大きな選手、チームを目指すのであれば。

「〈とはいえ、この場面でランナーを送れないのは重い〉といった気持ちになることも理解はできるのですが、それを越えていかなければならない。最終的にはそれぞれの打者には役割があって、自分が向かう方向性が出てくるものではあります。しかし、今の段階でそれを決めたら上限が決まってしまう。喉から手が出るほど優勝したいし甲子園にも出たい。だけど、そこにチャレンジがないと、チームの最高点が決まってしまい、伸びしろがなくなってしまうんですね。だから優勝はできましたが、それで全て良しとはできないんです」


秋の戦いを振り返る須江航監督。チームの可能性をさらに引き上げるための⽅策を考え続ける。


リポート後編→数字と向かい合いながら、スケールアップを図る選手たち


(取材・文/田澤健一郎 撮影/田澤健一郎・Timely! WEB 編集部)



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