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鎌倉学園が逆転勝ちで準々決勝へ! 「応援」の力で52年ぶりの関東1勝

2020.10.27

関東大会1回戦。鎌倉学園の選手たちにとって公式戦初となるZOZOマリンスタジアム。先発の増島佳祐(2年)は手指をホッカイロで温めながらのウォーミングアップ。ベンチの控え選手はストップウオッチを手に「あと5秒! あと3秒!」と、タイムスケジュールを叫んでいた。


「バウンドはどうだ?」

「風がライト方向に吹いてるぞ」

「よっしゃ。いい雰囲気!」

入念に準備する選手たちからは、陽のオーラしか漂っていない。

「今日は千葉の学校さんに練習試合に行くというイメージで、家からここに来ました。球場練習? していません。ウチは甲子園で校歌を歌うことを毎年目指しているチーム。初めての環境でいかに自分の力が出せるかが重要ですから」。竹内智一監督は冷静に話した。母校でもある鎌倉学園は33年ぶりの関東大会出場。自身にとっては就任8年目で初の経験だったが、気負いはなかった。

試合は序盤からリードを許す苦しい展開だった。相手投手の落ちる変化球に苦戦しながらも、3回と5回に2度同点に追いついた。しかし5回裏に3点を追加され、4-7。5回のグランド整備の間、ベンチで気持ちを入れ直し、6回表。2死二、三塁から8番阿部功志郎(2年)が逆転右前打を放って逆転。阿部は県大会で背番号13をつけたリザーブの選手。ここまで公式戦1打席しか立っていなかったが、今季初のスタメン出場に応えるように3打数2安打2打点と活躍した。そこからは2番手の平本龍太郎が4回を2安打無失点に抑える好リリーフ。7回、8回は四球を足掛かりにさらに3点を追加しダメ押しした。日替わりヒーローで勝ち切るのが鎌倉学園の強さだ。

粘り勝ちの要因は「練習です」

付属中学の指導者を経て2013年秋に監督就任した竹内智一監督。選手一人ひとりに気を配る指導に定評がある

打ち合いとなったシーソーゲームを制しても、竹内監督はやはり冷静だった。

「昨日の夜にみんなで共有したんですが、スタンドにいる生徒が54人。ベンチに入れない不本意な思いをしている生徒が多い。一人ひとりの我慢の上に成り立っているチームなんです。今日は親御さんにスタンドから見てもらえて、一番の親孝行だと思っています」と選手の健闘をねぎらった。神奈川大会は夏と秋、感染予防最優先のため保護者の入場が叶わなかった。関東大会ではガイドラインが変わり、保護者2名までが観戦可能に。選手たちにとっては親への感謝をプレーで見せられる1年ぶりの機会となった。

捕手として増島―平本龍太郎(2年)を好リードし、3安打1打点を挙げた3番森高裕一郎(2年)は「応援が後押しになった。気持ちの持ち方が強くなれた」と感謝した。声を出すことはできないが、スタンドに見える「応援の光景」が2死からの逆転劇をもたらした。しかし2時間48分を要した初戦の残塁は16と反省点も多い。竹内監督は「粘り勝ちの要因は練習です。これから帰って練習します」と球場を後にした。

関東大会での勝利は1968年以来52年ぶり。久保逸郎―栗山正雄のバッテリーを擁して1969年センバツ出場した時以来の快挙となる。27日、専大松戸との準々決勝に勝利すれば来春のセンバツ出場が有力となるが、竹内監督が目指しているのはもちろんそこではない。

「スタンドみんなで肩を組んで校歌を歌うこと。それが叶わないのが今の状況。ならば叶うまで勝ち続けなければならない。それがOBとしての願いです」。ゲームセットの瞬間まで勝利を諦めない。コロナ禍によって奪われた「応援」を再び取り戻す日まで、負けるわけにはいかない。


中軸を担う3番キャッチャーの森高裕一郎。増島佳祐、平本龍太郎を盛り立てる


先発の増島佳祐。「緊張して球が走らなかった」と反省するも味方を信じ5回を投げ切った


第73回秋季関東地区高等学校野球大会
▽1回戦(10月25日・ZOZOマリン)
鎌倉学園 001034120=11
昌平   013030000=7

(写真・取材・文/樫本ゆき)


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