トレーニング

高校球児ための、よくわかる「メンタルトレーニング」

2020.6.2

スポーツメンタルトレーニング指導士 、小林玄樹さんへのインタビュー。前編ではメンタルトレーニングの考え方や、日本がこの分野で遅れている理由、陥りやすい状況などについて触れたが、後編は具体的な手法について。また、夏の甲子園大会が中止になった今だからこそ、目標を見失ってしまいそうになりがちな高校球児にメンタルトレーニングの分野でできることなどについてお届けする。


今の自分のメンタルの状況を知ることが大事

インタビュー前編はこちら

--小林さんが実際に選手、チームのサポートをする時には、スポーツメンタルトレーニング指導士として具体的にはどのようなことをされているんでしょうか?

小林「アプローチとしては色々な方法があります。座学的な講習会という形式でやることもありますし、あと一番多いのは選手と1対1で対面式で行う形ですね。あとは現場に帯同することもあります。1対1でやることが多いのは、やはり選手によって抱えている課題がそれぞれ違うからなんですね。例えばモチベーションが持続できない選手に対しては目標設定のやり方を変えてみる、ミスを恐れて実力発揮できないケースはまず選手がそのミスに対してどのように認知してその後どういう選択をしたのかを確認してプラスに持っていくにはどうすればよいかを考える、といった形で提案しながらテーラーメイドしていきます。選手によって感じ方や考え方は違いますから、いつも何か決まったことをやる、ということは少ないですね」
 
--目標設定というお話が出ましたが、基本的には選手は何か目標を持っていて、それに対するアプローチということが多いですか?

小林「必ずしもそういうわけではありません。今だと東京五輪の選考が宙ぶらりんになっていてどうなるか分からない状態の選手もいます。そういう選手の場合はギリギリまで東京五輪を目指すのか、次のパリ五輪に切り替えるのか、というところからかかわってくることになります。そういうどこをターゲットにするかというのも大事な話ですね」
 
--高校野球ではちょうど夏の甲子園大会が中止になって、次は何を目標にしたら良いか分からない球児も多いと思います。そんな球児に対してメンタルトレーニングの観点から何かアドバイスなどはありますか?

小林「メンタルトレーニングではまず今の自分のメンタルの状況を知ることが大事なんですね。落ち込んでいるなら落ち込んでいるとまずは自分で認識するところからがスタートです。高校生だとなかなかそれも言いづらくて、曖昧な状態になりがちだと思います。そうやって感情、気持ちを抑え込むばかりではなく、まず整理して受け入れることが重要ですね。そのうえで次に重要になってくるのは自分がコントロールできる範囲とできない範囲を明確にすることです。甲子園が中止になった。これは自分ではコントロールできないことです。でもそんな状態でも自分でコントロールできることはいっぱい転がっています。そういうことをしっかり整理して次に向かうことが大切ですよね。その結果、受験勉強に向かうという判断をすることも当然あることだと思います」
 
--選手だけでなく、選手に接している指導者や保護者に対して気を付けた方が良いポイントなどがあればお願いします。

小林「保護者の方に関しては、一つ言えるのは選手にとってポジティブなロールモデルになってもらいたいということですね。高校野球の場合、選手と同じくらい保護者もショックでストレスを感じていることもあると思います。逆に親が落ち込んでいることに対して子どもが気を遣っているケースもあるかもしれません。そうではなくて、保護者自身がその状況を乗り越えるということを見せてあげるというのは大事ですよね。
あとは指導者、保護者両方に言えることですけど、選手としっかりディスカッションをすること。選手がどんな状態なのか知らないまま自分の考えだけを言ってしまうのではなく、しっかり話し合ったうえで次の方向性を一緒に考えていく。そういったことが重要ではないですかね」


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