トレーニング

制球力を向上させるための投球動作改善(18)

2015.10.22

 こんにちは。野球塾リトルロックハートのコーチ、大友です。K君の制球力アップを目指したコーチング連載も18回目を迎えました。そして今回はスモーキーピッチングをテーマにアドバイスを送って行きました。みなさんはスモーキーという野球用語を聞いたことはありますか?

 アメリカでは打ちにくいピッチャーを「スモーキー」と呼んで賞賛することがあるんです。日本のピッチャーでスモーキーと言えば、千葉ロッテマリーンズの涌井秀章投手だと思います。涌井投手は160kmのストレートを投げられるわけでも、誰も打てない魔球を持っているわけでもありません。それでも涌井投手がこれだけ輝かしい成績を収められている理由は、まさに「スモーキー」に秘密が隠されているのです。

 わたしの投手コーチングでも、基本的にはスモーキーを目指したモーションを目指しています。ではそろそろスモーキーの意味をご説明いたしましょう。まず4枚の写真をご覧になってみてください。

  ボールが体に隠れているテイクバック

  ボールが体に隠れているトップポジション

  テイクバックでボールが丸見えの状態

  トップポジションでボールが丸見えの状態


 最初の2枚はスモーキーで、下の2枚はスモーキーではありません。スモーキーという言葉の意味は「まるで煙の中から突然ボールが飛んでくるかのように、いつどこでボールをリリースしてくるのかが見えない」ということになり、そのようなピッチャーをスモーキーと呼んで賞賛します。

 上の2枚はテイクバックでは体側に、トップポジションでは頭にボールが隠れていて、バッターからはリリースの瞬間までボールが見えない状態になっています。しかし下の2枚はテイクバックでもトップポジションでもボールがバッターから丸見えの状態になってしまっています。これではどれだけ速いボールを投げられたとしても、かんたんに打ち返されてしまいます。そういうピッチャー、プロでもたまにいますよね。

 実はスモーキーの形はボールが見えにくいというだけではなく、制球力や球速をアップさせるためにも理に適っているんです。まずテイクバックは、投球方向の真逆に引くことによって、投球方向に対して最大限の助走をつけることができ、球速がアップします。

 そして投球方向に対してリリース前のボールが左右前後に膨らまない分、真っ直ぐの軌道上でボールをリリースしやすくなり、内外の制球力がアップしていきます。

 ちなみにテイクバックを背中側にはみ出し過ぎると肩、トップポジションで肩関節が内旋して胸側にはみ出てしまうと肘が下がり肘に大きな負荷がかかっていきます。つまりパフォーマンスをアップさせるためにも、故障のリスクを軽減させるためにも、スモーキーの形はプラス材料が非常に多いのです。現に涌井秀章投手も軽度の肘の軟骨剥離はあったものの、大きな肩肘の故障はなく、素晴らしい実績はここで語るまでもありません。

 K君の場合は最初の頃はボールを大きくはみ出させた形で投げていたため、パフォーマンスはなかなか上がりませんでした。しかしコーチングを進めていくにつれ、まだまだスモーキーには至っていませんが、徐々にスモーキーに近づきつつあります。K君はまだ大学1年生であるわけですが、もしスモーキーを身につけられれば、次の春にはきっとチームの主力投手になっているはずです!




  
 



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