トレーニング

【運動脳トレーニング】状況判断を磨く「シナプソロジー」の効果

2015.8.3
「シナプソロジー」という言葉を聞いたことがあるだろうか。シナプス(脳内の神経の接合装置)から生まれた造語であり、「機動破壊」をスローガンに甲子園常連校に成長した健大高崎などが取り入れている新しいトレーニング方法である。
言葉の定義としては、「2つのことを同時に行う」「左右で違う動きをする」という意味。普段慣れない動きで脳を適度に混乱させることによって、運動脳を鍛え、状況判断を磨く狙いがある。
具体的にどのような取り組みが行われているのか。健大高崎でトレーナーを務める塚原謙太郎氏に、シナプソロジーの効果やメニューについて教えてもらった。
シナプソロジーのトレーニングに取り組む健大高崎高校の選手

★状況判断を磨く
――シナプソロジーに興味を持ったきっかけを教えてください。
塚原「極端な話をしますが、練習をすれば150キロのストレートは誰でも打てるようになると考えています。そのなかで、一流選手と二流選手の差は何かといえば、状況を判断する能力だと思うのです。では、状況を判断して、体を動かすのはどこかといえば脳ですよね。脳を鍛えることによって、判断力を磨いていく。それを養うのが、シナプソロジーということです」

――健大高崎で取り入れて、どのぐらい経つのでしょうか。
塚原「2年ぐらいでしょうか。まだまだ、私も勉強している最中です。科学的に証明できるものはないですが、状況判断や反応スピードはよくなっていると思います」

――選手の反応はいかがでしょうか?
塚原「毎日やるわけではないので、しばらくやっていないと、選手のほうから『塚原さん、シナプソロジーやってくださいよ』と言ってきますね。選手のほうから『やってください』とリクエストするメニューも珍しいと思いませんか?」

――なかなか珍しいですね! 選手を見ていると、とても楽しそうにやっていました。ああいう雰囲気でいいのでしょうか。
塚原「いいと思います。でも、雰囲気がゆるみすぎてしまうのもダメ。だらっとしている雰囲気のときにはやりません。あえて、固い雰囲気で動きが悪いなと思うときに取り入れる。シナプソロジーによって、緊張感が和らいでいきますね。ときには、試合前のバスでもやるときがあります」

――試合前のバスでやるとは、興味深いですね!
塚原「高校野球は第一試合になると、朝が早いですよね。そこで、脳のウォーミングアップを兼ねてシナプソロジーを取り入れています。面白いのが、シナプソロジーをやると、『お腹が減った』という選手が増えることです。脳を使うのでお腹が減る。しっかりと脳を使っている証といえますね」


★脳を飽きさせずに活性化する
――実際のトレーニングを見ると、いろいろなメニューがあるんですね。
塚原「8割ぐらいはベーシックなメニューで、残り2割は即興で作っています。一番いけないのは、固定観念が入ってしまうこと。順番を待っている選手が、『1=右』とわかってしまうと、効果が薄れてしまう。『1=左』と条件を変えることによって、脳の活性化につながっていきます。脳を飽きさせずに、常に変化させていくことです」

――近年流行っている「脳トレ」とはまた違うのでしょうか。
塚原「少し違います。スポーツで大事なのは、目の前の条件から適切な判断をして、脳に指令を出し、自分の体を動かすことです。これを、『運動脳』と呼んでいますが、シナプソロジーの特徴は体を動かすところにあります」

――指導している最中に、「脳が沸いてきたか?」という表現を使っていましたね。初めて聞いた言葉です。
塚原「脳が沸く。脳がパニックになった状態です。表現を変えれば、頭が真っ白になっている。こういう状況は、試合でも起こり得ますよね。そのなかでいかに頭を整理して、正しい判断を下していくかが大事になります」

――これを読んだ選手が、いまからでも取り入れられるメニューはありますか。
塚原「たくさんありますよ。たとえば、じゃんけん。『じゃんけんでわざと負ける』というだけでも、脳を活性化することにつながっていきます」


次回は「シナプソロジー」の具体的なトレーニングメニューをご紹介します。

■シナプソロジー セミナー情報 「甲子園常連校が実践する “オフのカラダづくり”セミナー



■塚原謙太郎
1974年5月4日生まれ、東京都出身。都立淵江高校~東北福祉大~日本生命。社会人で5年間プレーしたのち、トレーニングの専門学校へ入学。現在は健大高崎のトレーナーを務めている。


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