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【2018甲子園】「第100回全国高校野球選手権記念大会」サプライズ10!

2018.8.22

大阪桐蔭の春夏連覇で幕を閉じた第100回記念の全国高校野球選手権。今年は史上初となるタイブレークが実施され、逆転満塁サヨナラホームランも飛び出すなど記念大会に相応しい盛り上がりを見せた。そんな100回大会をアマチュア野球ウォッチャー、西尾典文が特に目についた出来事、チーム、選手などについて振り返ります。


この夏目撃した、甲子園サプライズ10!

【サプライズ1】大阪桐蔭、史上初となる二度目の甲子園春夏連覇!

サプライズと呼べるものではないかもしれないが、史上初の偉業を称える意味で真っ先に選出した。明治神宮大会では創成館に敗れたものの、その後は公式戦無敗で春夏連覇を達成したことは称賛に値する。北大阪大会の準決勝では履正社にあと一歩まで追いつめられたが、そのこともあってか今大会では更に隙の無いチームに仕上がっていた。根尾昂藤原恭大にスポットライトが当たることが多いが、控えのメンバーまで含めてレベルの高い選手を揃えているのが今年のチームの強みであり、西谷浩一監督が語るようにまさに部員全員で勝ち取った優勝だった。



【サプライズ2】金足農が秋田勢103年ぶりの決勝進出!

サプライズという意味では金足農の躍進がナンバーワンだろう。大会前のスポーツ新聞各紙の評価も決して高いものではなかったが、鹿児島実、大垣日大、横浜、近江、日大三といずれも甲子園常連校を破っての戦いは見事だった。エースの吉田輝星のピッチングはもちろんだが、勝負所で逆転ホームランが飛び出し、また近江戦ではサヨナラのツーランスクイズを決めるなど、チーム全体で勝ち取った勝利でもあった。

【サプライズ3】吉田輝星が熱投!その一方で登板過多の心配も

サプライズ2でも取り上げた金足農の吉田のピッチングは見事という他なく、間違いなく今大会ナンバーワン投手の迫力だった。しかしその一方で地方大会から選手権の準決勝まで10試合を一人で投げ抜き、決勝戦の5回までを含めて1,517球を投じたことへの不安は感じずにはいられなかった。他にも準決勝に進出した済美の山口直哉も地方大会から本大会の3回戦まで一人で投げ抜いていた。球数制限を設ければ全てが解決するわけではないが、将来ある選手を守るためにも早急に手を打つべき問題と言えるだろう。

【サプライズ4】ドラフト上位候補が躍動!高校生候補は大豊作か?

最大の注目選手と見られていた根尾、藤原の二人は揃って3本塁打をマーク。打率も4割を上回り、長打力だけでなく確実性でも進化を見せた。また守備、走塁についても見事という他ない。野手で二人に次ぐインパクトを見せたのが小園海斗(報徳学園)だ。初戦では大会タイ記録に並ぶ3本のツーベースを放ち、スピード抜群のベースランニングと軽快な守備で高校ナンバーワンショートと評価された。野村佑希(花咲徳栄)、北村恵吾(近江)の二人も2本塁打と活躍。改めて評価を上げたと言える。投手で吉田に次ぐ評価を得たのが渡邉勇太朗(浦和学院)と柿木蓮(大阪桐蔭)だ。ともに春は故障に苦しんだが、最後の大舞台で見事なピッチングを見せた。巡り合わせ次第では1位指名の可能性もあるだろう。ここまで期待された選手が期待通りのパフォーマンスを見せる年は珍しい。10月のドラフト会議では彼らの名前が多く呼ばれることになるだろう。




【サプライズ5】下級生が躍動!来年以降も豊作続くか?

今大会は投手を中心に下級生の活躍も多く目立った。148キロ以上のスピードをマークした投手は9人いたが、そのうちの実に5人が2年生だったのだ。中でも圧巻のピッチングを見せたのが西純矢(創志学園)だ。優勝候補の創成館を相手に16奪三振で無四球完封をマーク。コンスタントに145キロを超えるスピードと鋭いスライダーを低めに集めるピッチングは安定感抜群だ。他にも奥川恭伸(星稜)、根本太一(木更津総合)、及川雅貴(横浜)、井上広輝、廣澤優(ともに日大三)、篠田怜汰(羽黒)など来年の有力候補は目白押しだった。他にも2年生、1年生で既にチームの中心となっている選手は多く、来年以降の楽しみも感じさせる大会だった。



【サプライズ6】過去最高?140キロオーバーは当たり前の時代に

99回大会でも投手のスピードが全体的にアップしていることを取り上げたが、今大会は更にそれが加速していると感じた。全体の最速は柿木の151キロだったが、145キロを超えた投手は19人、140キロ超えとなる61人を数えた。ちなみに昨年は49校の出場で51人であり、今年の方が割合も増えていることがわかる。更に今大会は不調や試合展開から出番のなかった投手にも島田直哉(龍谷大平安)、佐藤幸弥(羽黒)といった140キロ台後半のスピードを誇る選手も控えていた。今後もこの流れは続いていくだろう。

【サプライズ7】内野の守備レベルが向上!プロ顔負けのプレーも

今年は根尾、小園のようなドラフト上位候補以外にも全体的に守備力の高いショートが多く、流れるようなプレーを見せるケースが多かったが。一昔前まではダブルプレーが成立するだけで観客が沸いたが、現在では一試合で度々見られることも少なくない。常葉大菊川は2回戦の日南学園戦で3イニング連続で併殺を完成させている。また齊藤大輝(横浜)は二遊間の難しい当たりを見事なグラブトスで併殺にしとめ、観客を沸かせた。以前よりも中南米の選手などのグラブさばきを参考にする指導が増え、守備に対する考え方も変化しているように見える。今後も更に進化していくことに期待したい。


【サプライズ8】パワーへの対応か。外野の守備位置が後退傾向に

サプライズ7では内野の守備力の向上について触れたが、その一方で多く見られたのがシングルヒットだと思われた打球でも打者走者がセカンドを陥れるケースが多かったことだ。昨年の大会でもホームランが量産されたが、全体的に打者の飛距離はアップしており、それにともなって外野手の守備位置が後退していることが影響しているように見える。またコリジョンルールが徹底されたことで、一気にホームを狙うケースも多かった。このような変化に対応して、更に外野手のスローイングのレベルも向上していくことを期待したい。

【サプライズ9】タイブレークが初の適用!逆転サヨナラ満塁ホームランも

甲子園大会では今年の選抜から導入されたタイブレーク方式だが、今大会が初の適用となった。旭川大と佐久長聖の試合ではタイブレークがスタートした13回は両チームが0点で凌ぎ、14回表の佐久長聖が1点を勝ち越して勝利。星稜と済美の1戦は13回表に星稜が2点を勝ち越したものの、裏に矢野功一郎が逆転サヨナラ満塁ホームランを放ち、劇的な勝利を収めた。今大会は混乱は起こらず、また最長でも14回で決着がついたものの、今後ケースが増えることは想定される。各チームがどのような対策をとってくるのか、新しい戦術が生まれるかなどにも注目したい。

【サプライズ10】高校野球人気沸騰!初の入場者数100万人超え

100回記念大会、大阪桐蔭の春夏連覇、金足農の躍進など様々な要因があったが、例年以上に多くの観客がつめかけ、準々決勝では5時40分に満員通知が出るという異例の事態となった。今大会からネット裏の中央特別席を指定席として事前にネット販売し、これまで無料だった外野席を有料化するなどの変更があった影響で現場では混乱が見られたが、高校野球人気が過熱していることは間違いないだろう。


最後にも触れたように、お盆休みに入る8月11日以降は連日満員通知が発表され、またそれに応えるかのような熱戦も続いた。100回記念に相応しい大会、そして優勝校であったと言えるだろう。しかしサプライズ3でも触れたように、選手に対する負担の大きい過密日程の問題は解消されていない。また熱中症への対策も十分と言えたかは検証する必要があるだろう。次の100年も高校野球が素晴らしいと思えるような大会とするために、今後も積極的な議論を行っていくことが望まれる。(記事:西尾典文)


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