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【瀬谷高校】練習環境を言い訳にしない!効果の高い練習を追い求める県立高校の野心(守備・走塁練習篇)

2017.1.26

昨年夏の神奈川県大会三回戦で東海大相模と1点差の大接戦を演じた神奈川県立瀬谷高校野球部。就任4年目となる平野太一監督の指導で年々力をつけている注目校だ。激戦区神奈川で甲子園を狙う瀬谷高校・野球部の若き指揮官の練習法を取材した。


練習に励む瀬谷高校の選手達

◆目次◆
常にタイムを計測して行うベースランニング
スピードと正確さに重点を置いたクイックスロー
低い姿勢とグラブさばきの柔らかさを求める内野守備
ストップウォッチを使った外野守備
女子マネージャーが捕手指導?!


平野監督は大分県の出身で大学は岡山県の川崎医療福祉大を卒業している。関東にも神奈川にも縁がない経歴だが、あえて厳しい地区で指導者になりたいという思いから神奈川県の教員採用試験を受けたという変わり種だ。2008年に津久井浜高校に赴任すると、2012年夏の県大会ではベスト16に進出。翌年から異動した瀬谷でも前述した通り東海大相模と大接戦を演じるなど、着実にチームを強化している。

常にタイムを計測して行うベースランニング

そんな平野監督が特にこだわっているのが目に見える数字。選手は全員ストップウォッチを持ち、タイムを計測している。そのタイムも単純な一塁到達やベース一周などではなく、リードからの帰塁や第二リードからの帰塁など細かいプレーにまで及んでいる。
「練習時間も限られているので何度も何度もはやりませんが、それぞれの場面で1本は必ずタイムを計測するようにしています。基準のタイムや自分のベストタイムと比べてどれだけ違うかということで、そのプレーが良かったのかという基準が分かりますから(平野監督)」

スピードと正確さに重点を置いたクイックスロー

続くキャッチボールで行われたのがスピードと正確さに重点を置いたクイックスロー。「キャッチボールクラシック」(http://jpbpa.net/classic/)というプロ野球選手会が考案したものを取り入れており、7mの距離で二組に分かれて行い2分間で何往復できるかというもの。

通常は普通に立った姿勢で行うが、瀬谷では低い位置からボールをとらえるという目的で屈伸した姿勢で捕球することを徹底している。

それだけ負荷がかかり後半になってくると体力的にも厳しくなってくるが、目指す目標は140回。日本記録が139回(かほく市立高松中学校・2015年)ということで、かなり高い目標設定になっている(ちなみにプロ選手でも120回に到達するのが難しいとのこと)。

7mのあとは30m、40mと長い距離でも行い、素早く遠くに強いボールを投げる練習も行っている。

低い姿勢とグラブさばきの柔らかさを求める内野守備

キャッチボールの後に行われたのはポジションに分かれての守備練習。ここでも細部にこだわた練習法が見られた。

まず内野手に対して繰り返し言われていたのが低い姿勢とグラブさばきの柔らかさ。現役時代は内野手だった平野監督だが、全てボールの正面に入ろうとするとプレーが遅くなり、逆にエラーも増えるという実感から、この部分にこだわっているという。まず行ったのはボールを使わずに体勢を低く保って、捕球姿勢を繰り返すというもの。

二人一組になって行い、一人が捕球姿勢をする選手の頭や腰を上から押さえて低い姿勢を保つ。姿勢を確認するのはもちろん、捕球する手の動きに対しても常に「柔らかく!柔らかく!」という声が飛び、強く意識されていた。

そして次は実際にボールを使ったグラブだけの捕球練習。

これも二人一組で、ボールを左右に投げてグラブだけでさばくというもの。投げるボールに微妙に変化をつけ、グラブだけで対応しないといけない場面に備えるというものだ。

次は捕球から送球に流れまでを行う練習。前から転がるボールに対して捕球して送球に姿勢までを繰り返すが、少し長い距離を投げるツーステップの場合は投げる腕をしっかり上にあげることを意識させるために、捕球のあとに腕を回す動作を入れていた。

短い距離の送球を想定したゴロの捕球は、ワンステップで素早く投げることを意識して捕球と同時にボールを持ち替えて「体を割る」ことを繰り返していた。

また全体的な捕球から送球の流れををスムーズに行い、グラブさばきを柔らかくするために「けん・けん・ぱっ」のリズムでゴロを受ける練習も行っていた。

平野監督からも「今のはどんな打球だ?(腕を)回すの?(体を)割るの?」という声が飛び、常に目的を選手が意識するように指導していた。

ストップウォッチを使った外野守備

外野手はこの日は内野手のような細かい動きの練習は行わず、ノックからの返球を繰り返し行っていたが、ここでも活用されていたのがストップウォッチだ。ノッカーが打ってから返球を捕球するためのタイムを常に計測しており、それを外野手に伝える。本塁でアウトにできるタイムの基準と比べて早いか遅いかで守備位置をどこにとれば良いかを常に変化させており、そのためにグラウンドにはメジャーが置かれている。

また、ワンバウンドで正確に投げるためのマーカーも置いており、それを狙って投げるように指示がされていた。

女子マネージャーが捕手指導?!

捕手のキャッチングも重視しているのはグラブさばき。ワンバウンドのボールに対して正面に入る練習だけでなく、とっさのボールにも対応できるようにミットだけで受ける練習や、マシンから放たれる低めの速いボールに対して下からミットで弾く練習を行っていた

低めのボールに対してミットを上からかぶせてしまうとストライクでもボールに判定されることが多く、それを防ぐことが狙いだという。捕手は女子マネージャーが練習相手となっていたが、ただボールを投げるだけでなく「今ミット下がったよ!」などとしっかり指摘する姿も印象的だった。平野監督も常々「女子マネージャーも戦力」と語っているそうで、そのために日々野球のプレーについても勉強しているとのことだ。(取材・文・写真:西尾典文)



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