徳島商、高松商、松山商と並ぶ“四国四商”の一つとして、県内最多の甲子園通算59勝を誇る高知商。近年は明徳義塾の一強が続いているが、同校OBで80年センバツ優勝時の主将であり、中学野球で長く実績を残した上田修身監督が一昨年秋に就任し、巻き返しを狙っている。そんな高知商の冬の練習を取材した。
コーンを使ったランニング1:リレー
ティーバッティングの後に行われたのがコーンを使ったランニングだ。まずコーンを四つ使って15m間隔の正方形を作り、その中心にもコーンを置く。そして選手は正方形の頂点の四つのコーンにそれぞれ分かれる。そこからこの正方形の周りを走るのだが、狙いはベースランニングをいかに速くするかということだという。そのため、まずは余裕のあるスピードでどの軌道でコーンを回れば良いかの確認を行う。
特に意識するのはコーンを回った後の出足の2歩。その2歩でトップスピードに入れるのはどの軌道かということを確かめていた。最初は余裕を持って少し大きく回り、徐々に膨らみを小さくしていくという。そして軌道の確認が終わるとリレーがスタート。走者は正方形を半周して次の選手にタッチする。
常に四人の選手が短い間隔で走り回るため、少しでもつまづいたりスタートが遅れると後ろの選手に追い上げられることになる。直線だけでなくターンでのスピードが要求されるベースランニングの技術向上になることは間違いないだろう。
コーンを使ったランニング2:砂時計
次のランメニューは少し複雑になる。まず選手は四隅のコーンから正方形の中心に置かれたコーンに向かってスタートを切る。その後、それぞれ自分の左前方にあるコーンに向かい、そこから正方形の一辺に沿って右のコーンを目指し、そこから再び中心のコーンを目指すのだ。このメニューの通称は“砂時計”。走るラインをなぞると、中心がくびれた砂時計の形に見えることから来ている。
そしてこのメニューで守らなければならないのが、中心のコーンには四人同時にタッチするということ。選手は走っている間に自分のスピードを速めるか緩めるか判断する必要があるのだ。その判断をするために他の選手を見るのはコーンをターンする時ではなく、あくまで一辺を走っている時。それは実際の走塁においても守備の選手や他のランナーを確認するのはベースから離れている時だからということから来ている。ゆっくり走れば難しくはないが、これを全力に近いスピードで行うのは非常に難しい。走塁のスピードだけではなく、状況判断のために周囲を見ながら走るということを訓練づけるために有効な練習と言えるだろう。
コーンを使ったランニング3:スクエアパス
次に行ったのはコーンを使ったスクエアパス。バスケットボールではポピュラーな練習メニューだが、これを野球で取り入れていることは珍しい。正方形の四つの頂点のうち、対角線となる二つの頂点の選手がボールを持って右側のコーンに向かってスタート。待っている選手にボールをトスし、リターンを受けて更に右のコーンに向かって走りトスしたところでその選手は終了となる。トスを受けて返球した選手はリターンを受けた選手を追いかける形でスタートを切り、次のコーンでボールを受けて更に右のコーンまで走ってトスをして終了。この動きを繰り返すのだ。
この練習を速く正確に行うには、相手の動きに合わせるということが重要になってくる。野球のプレーではファーストゴロでベースカバーに入る投手にトスする場面が最も近いが、他のでも相手の動きに合わせるプレーは少なくない。またボールを呼ぶタイミングも重要であり、選手同士のコミュニケーションを高める意味でも効果的と言えるだろう。
(取材・文:西尾典文)