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【山梨学院】吉田洸二監督|「交流試合」で気付かされた、監督が作り出す雰囲気の大切さ

2023.7.23

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか?
今年の春のセンバツ大会で見事に優勝した、山梨学院高校の吉田洸二監督にお話を聞きしたインタビューの後編です。(聞き手:大利実)


ホームルームの延長で甲子園を戦う

――今春のセンバツを制したあと、「光高校(3回戦)との試合途中に、清峰でやっていた『ホームルームの延長のような野球を思い出しました』とコメントされていました。非常に印象的な言葉だったのですが、どのような心の変化があったのでしょうか。

吉田 5回裏が終わったあと、部長(吉田健人先生/吉田監督の長男)に『これから、点が入るぞ』と言いました。何かこう、うまく言えないんですけど、2回戦で氷見、3回戦で光と、続けて県立高校と対戦させてもらう中で、清峰時代の自分を思い出したんですよね。もっと笑顔で、甲子園のこの雰囲気を楽しんでいたなと。

――清峰の選手たちは、「お祭り」のような雰囲気で戦っていた記憶があります。

吉田 清峰で甲子園に出たときは、「力を出せなかった」と感じた試合が一度もありませんでした。それどころか、いつもの「2割増」です。それが、山梨学院では甲子園でなかなか力を発揮できず、「2割引」になっていました。それは、監督である私の責任です。生徒たちの力を奪っていました。



――清峰では甲子園通算13勝4敗と圧倒的な数字を収めていましたが、山梨学院では2022年まで2勝9敗でした。

吉田 甲子園にはよく、「魔物がいる」と言われますが、その正体は球場の雰囲気や浜風などいろいろあると思います。その中のひとつに、「監督の心理」もあるんじゃないかなと。監督の表情や言葉が、得点に反映されやすい。だから、今回のセンバツは大会前から、「無理やりにでも笑顔で戦おう」と思っていたんです。その気持ちがあったから、光との試合で清峰時代の自分を思い出すことができたのかもしれません。

――「何かを変えよう」という気持ちは、大会前からあったのですね。

吉田 じつは昨年12月に、中学硬式のタイガースカップを甲子園球場に見に行ったのですが、阪神甲子園駅を降りて、甲子園の外壁を見ただけで具合が悪くなりました。ここまで負けていることを思い出してしまって……。夜も出かける予定をやめて、宿舎でゆっくり過ごしました。

――トラウマという言葉が適しているかわかりませんが、それに近い感情でしょうか。

吉田 この2週間後に、今度は部長がタイガースカップを見に行ったんですけど、山梨に戻ってきてから、「甲子園球場を見たら、具合が悪くなった……」と私に言ったんです。部長はまだ26歳の若者です。本来は憧れの場所である甲子園をそのように思わせてしまっている。ひどく責任を感じました。



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