学校・チーム

【聖光学院】斎藤智也監督|チームや選手にはいいタイミングで挫折を経験することも大事

2023.12.29

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか? 「不動心」を掲げ、この夏にも2年連続18度目の甲子園出場を果たした、東北の強豪・聖光学院(福島)の斎藤智也監督にお話を聞きいた後編です。(聞き手:田澤健一郎)


力をつけても、その力を野球で引き出せるかは別

前編はこちら→

――聖光学院を「甲子園で勝てるチーム」に変えた「体」、すなわちフィジカルと体力を甲子園レベルまで高める取り組み。これは伸び悩んでいるチームの起爆剤にもなりますか?

斎藤 もう一段、壁を破って上に行くカギになり得るものだとは思います。ただ・・・・・・。

――ただ?

斎藤 丸いボールと丸いバットで戦う野球。試合の半分は運に委ねなければならないと思うんですよね。守りと走塁は鍛えれば鍛えだけ裏切らないとは思いますが、それでも。ハイレベルな試合になればなるほど、球際の、ほんの少しの捕った、捕らないが勝敗を分けたり。だから、選手たちにはグラウンドに立った姿勢が強く、たくましく、頼もしく、チーム愛のある選手になれと言っています。仲間を大事にしないチームに運は来ませんから。

――「強く、たくましく、頼もしく」とは自信に満ちた選手のようですね。

斎藤 その意味でも「体」のレベルアップは選手の自信につながるんですよ。ウチは50m走、塁間タイム、ベンチプレス、握力、腹筋、背筋、懸垂、そり飛び、バイクをこいでの最大パワーなど、たくさんの項目を定期的に測定しています。自分が成長していることを実感しやすいし、フットワークがよくなったり、速く強いボールが投げられるようになったり、スイングや打球の速度も上がっていく。そうなれば速球にもついていけるようになるし、足が速くなれば内野安打も増え、盗塁も成功しやすくなる。



――結果が出るようになって、さらに自信がつく。聖光学院といえば「不動心」に象徴される精神野球というイメージが強いですが、細かな数値への意識も強いんですね。

斎藤 本当に「体」の強化は一石何鳥にもなる。「体」の力がないと技術があっても相手のスピードについていけない、といったケースもありますから。

――近年はフィジカル強化で選手のプレースタイルがガラッと変わるケースがプロでもアマでも見られますね。

斎藤 ただ、釘を刺すような悪いですが、体力をつけて技術が上がっても、心がついていけてないと、以前と同じまま終わることもある。力をつけても、その力を野球で引き出せるかは別。だから先ほどの話のようにチームに運が来るような姿勢を意識してほしい。

――「強く、たくましく、頼もしい」選手になるには「体」の強化も重要、と。本当に初めての甲子園での大敗は今の聖光学院のスタートだったんですね。

斎藤 失敗は、それが全てとは言いませんが、ありがたいものではあります。うまくいかないことや、試練、敗北がないと人間は強くならないし、気づきも生まれない。チームや選手にはいいタイミングで挫折を経験することも大事だと思います。


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