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【山梨学院】吉田洸二監督|「万全の準備」で臨むことの大切さを学んだ、初戦敗退

2023.7.22

強豪校、名門校を率いる監督たちも、かつては手痛い失敗を経験し、後悔したことがありました。その失敗や後悔はその後の指導にどのように生かされたのでしょうか?
今年の春のセンバツ大会で見事に優勝した、山梨学院高校の吉田洸二監督にお話を聞きました。(聞き手:大利実)


準備不足で臨んだ秋の県大会で初戦敗退

――「名将の失敗」がテーマになります。その失敗を失敗のままに終わらせず、どのように成果に結びつけたか。そこまでお話を聞けると嬉しく思います。

吉田 わかりました。長いこと監督をやっていますから、失敗はいくつもあります。

――真っ先に思い出すのは、どの試合ですか?

吉田 清峰のときですね。今村猛(元広島)でセンバツ制覇を果たした次の世代の秋季大会(2009年)です。じつは、今村の代よりも能力の高い選手が揃っていて、自信を持って臨んだチームでした。佐世保高専との初戦、エースが初回から5者連続三振と快調なスタートを切りました。6人目のバッターは、ファーストへのフライ。練習であれば難なく捕れた打球だったと思いますが、落球で2アウト一塁。ここからフォアボールや連打で、あっという間に5点を取られました。打線の力を持ってすれば、取り返せる得点差でしたが、金縛りにあったようにバットが振れなくなり、最終的には7対8で敗れました。

――連覇を狙ったセンバツに出場できず、初戦敗退に……。

吉田 そのとおりです。なぜ、この試合を覚えているかというと、監督である私自身が、「コールドで勝てるだろう」と思っていて、相手チームへの対策を何もやっていなかったからです。先のことを考えて、練習の量を増やして、体力的に追い込んでいる時期でもありました。これまでの試合の中で、もっとも悔いが残る敗戦と言っても過言ではありません。



――今の時代なら、インターネットで「清峰、初戦敗退」と大きく取り上げられるかもしれませんね。

吉田 当時流行っていたのが、いわゆる掲示板です。当時の私は、どんなことが書かれているのか気になり、ついつい見ていました。ちょうど40歳になった年です。負けたあとにも見てしまって、余計に心が折れました。とにかく言いたい放題、書かれていますから。負けたのが9月でしたが、その1カ月間は外に出ることすら勇気が必要でした。掲示板に書かれていることを、周りの人も思っているんじゃないかと勝手に想像していました。

――インターネットの書き込みは、今も見ますか?

吉田 さすがにもう見ないですね。そう決めてから、心が落ち着くようになりました。高校野球の監督をやっているのなら、見ないことをお勧めします。

悔いが残る準備は絶対にやめる



――2009年秋の敗戦で、吉田監督が学んだのはどんなことでしょうか。

吉田「何を当たり前のことを」と思うかもしれませんが、どんなに力の差がある相手であっても、万全の準備で臨むことです。トーナメント制の高校野球は負けたら終わりです。「負けたときに悔いが残る準備は絶対にやめよう」「ああしておけばよかった、こうしておけばよかったと思うことはやめよう」と、自分の心に強く誓いました。高校野球の公式戦は、秋春夏すべて合わせても15~20試合です。365日の中で考えるとわずか20日。そのための準備を怠るような監督であれば、高校生の指導に携わらないほうがいい。その気持ちは、今も持ち続けています。

――2013年に山梨学院に異動し、監督としてさまざまな経験を積まれています。仮に、序盤で5点リードされたら、選手にはどんな声をかけますか。

吉田 佐世保高専に負けたときは、失点した直後は取り返す雰囲気があったのですが、それが気負いになりボール球を振り出したので、「もうちょっとじっくり見ていけよ」と言ったんですよね。それが逆効果で、今度はバットが出なくなりました。

――予期せぬビハインドだからこそ、声かけが難しいところですね。

吉田 今であれば、「とにかく1点」という言い方より、「まずはランナーを溜めていこう」と声をかけると思います。得点のことを言うと、選手たちはどうしても硬くなるんですよね。

――2アウト満塁であと1本が出ないと、よりショックが大きそうですね。

吉田 今のチームでは、「圧をかけよう!」という言い方をしていて、前半に守備陣にプレッシャーをかけることが後半の得点につながると話しています。


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