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【八戸学院光星】「強打のチーム」のイメージ変える、超高校級左腕トリオ

2024.3.11

3月18日に開幕する今年のセンバツ高校野球。その開幕戦に登場するのが八戸学院光星(青森/東北大会準優勝)だ。甲子園では「強打」の印象がある強豪校だが、今年は「超高校級左腕トリオ」を擁すなど、投手力で強烈な印象を残すかもしれない。


それは高校野球の練習ということを忘れさせる、壮観な光景だった。

八戸学院光星の室内ブルペンのマウンドに、左投手が3人並ぶ。向かって左からムッチリとした肉付きで力強い剛球を投げ込む岡本琉奨、サイドハンドに近い独特の角度からカミソリのような切れ味鋭いボールを投じる森田智晴、そしてキャッチボールの延長のような力感のないフォームから快速球とスライダーを両コーナーに投げ分ける洗平比呂。3人とも最高球速は140キロを超えており、岡本は最速148キロ、森田は最速140キロ、洗平は147キロ。超高校級のサウスポー・トリオと言っていい。

昨夏までは洗平と並ぶ二枚看板を張った岡本琉奨
ブルペンで洗平のボールを受けていた捕手の住本悠哉は、嘆息交じりにこうつぶやいた。

「この3人は投手陣でずば抜けているので、捕るほうは大変ですよ。(洗平)比呂は右バッターのインコースのストレートとスライダーだけで勝負できるんですけど、今日はアウトコースのボールがよかったですね」

八戸学院光星は前校名・光星学院時代から「強打のチーム」のイメージが定着している。坂本勇人(巨人)をプロに送り出し、2011年夏から3季連続甲子園準優勝した時期も田村龍弘(ロッテ)、北條史也(三菱重工West)を中心とした強打線を擁した。だが、今年のチームは八戸学院光星のイメージを変えるかもしれない。

その点について触れると、仲井宗基監督は苦笑しながらこう答えた。

「せっかく定着したイメージを失いたくはないんですが、今年は例年以上に投手力がいいので、今までとは違った形に仕上がるかもしれません」

3人の左腕のなかで、とくに能力が際立っているのはドラフト候補に挙がる洗平だ。投手を指導する津田勇志コーチは「質の高いボールを思ったようにコントロールできる分、現時点で投手としての能力は洗平が抜けています」と語る。
左腕トリオの中心、プロも注目する洗平比呂
千葉県出身の洗平だが、八戸学院光星とは「宿命」ともいえる縁でつながっている。父・竜也さんは同校OBの左投手で、東北福祉大を経て2000年ドラフト2位で中日に入団した元プロ野球選手である。

竜也さんは高校時代、3年連続で夏の青森大会決勝戦に進出しながら甲子園出場を逃した“悲運のエース”だった。その長男である歩人(現・國學院大)が中学生の頃、八戸学院光星の仲井監督はこんな誘い文句を用いている。

「洗平家にとって甲子園は悲願かもしれないが、俺たちにとっての悲願でもある。親父が味わった悔しさを何とか晴らそうやないか」

歩人が入学してから2年後、仲井監督は次男の比呂に対しても「兄貴と一緒に夢をかなえようや」と勧誘している。洗平兄弟がベンチ入りした2022年夏、八戸学院光星は甲子園出場を果たしている。

比呂は2年生になった昨夏の甲子園ではエースとして、2度目の聖地に立った。チームとして2勝を挙げ、ベスト8に進出。昨秋の東北大会で準優勝し、今春3月に開幕するセンバツへの出場校に選ばれている。

竜也さんと比呂は同じ左の好投手だが、仲井監督は「タイプが違う」と評する。

「お父さんはコントロールが悪くて、プロでも苦労しました。でも比呂はすごく器用でコントロールがいい。スライダーの曲がり方も、お父さんは柔らかい投げ方で曲がり幅の大きな『横のカーブ』という感じ。比呂は打者の手元で曲がる『本物のスライダー』。あれが決まると、相当に打ちづらいでしょうね」

昨夏までは洗平と岡本の二枚看板だった。そこへ、昨秋に森田が台頭。「中学2年の冬に腕を振る位置を下げました」という変則フォームは、左打者にとって恐怖感を植えつけるはずだ。仲井監督は「あいつは甲子園でもやれると思うんですよ」と手応えを口にする。
仲井監督は「あいつは甲子園でもやれる」と評価する森田智晴
「昨年の夏もベンチに入れてもいいくらいのレベルに仕上がっていました。秋に経験を積んで右肩上がりに伸びているので、これから楽しみですよ」


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