トレーニング

ハムストリングスの肉離れとQ/H比

2016.2.22

 スポーツをしていると「肉離れ」という言葉をよく聞くと思います。一般的に肉離れとはランニングやジャンプ、投球動作などの運動によって筋肉が急激に伸び縮みをしたときに、筋肉を覆っている筋膜や筋線維の一部が損傷し、機能低下を起こした状態であると考えられます。肉離れは筋肉のある部位であればどこでも起こる可能性がありますが、スポーツ現場でよく見られるのは大腿部(太もも)の後面、ハムストリングス(以下ハムスト)と呼ばれる部位や前面の大腿四頭筋、下腿三頭筋(ふくらはぎの部分)、内転筋、腹斜筋などですが、競技によってもその起こる部位は違ってきます。走る動作というのはほとんどのスポーツにおいて共通であり、ランニング時によくみられる大腿部の肉離れはその筋力バランスによっても起こるといわれています。

 基本的な肉離れの原因としては、柔軟性や筋力が低下した状態や、筋力のアンバランス、またウォームアップやクールダウン不足や疲労物質の蓄積などが複合的に絡み合うことで引き起こされるといわれています。筋線維が損傷している状態のため、ストレッチなどを行うと痛みを伴うことがあります。痛みがより強くでる場合はストレッチを控え、RICE処置などで患部を安静に保ち、アイシングを行って炎症症状がおさまることを優先させましょう。もちろんこのような状態では本来できるプレーをすることはむずかしいため、痛めた患部を動かさないようにして患部外トレーニングなどを行います。

 ハムスト肉離れ予防の指標として使われるのがH/Q比(=ハムスト・大腿四頭筋の筋力比)です。太ももの後面と前面の筋力比と考えてもよいでしょう。太ももの前面部、大腿四頭筋を1としたときのハムストの筋力を数値で表し評価します。通常は大腿四頭筋の筋力がハムストよりも強いのですが、さらに大腿四頭筋の筋力が強くなったり、もしくはハムストの筋力が弱くなったりするとこの数値が減少します。H/Q比は0.6を下回ると、ハムストの筋力強化が必須となり、0.5を下回ると肉離れを起こす可能性が高くなるといわれていますが、測定条件によってその評価が変わるため数値だけではなく相対的な評価も考慮に入れる必要があるでしょう。

 一度受傷して競技復帰をするときは、受傷前よりもさらに筋力レベルが強化されていないと、再発リスクが高くなります。柔軟性や疲労への対応ももちろん必要ですが、受傷前の筋力ではまたケガをする可能性があるということを理解し、痛みがなくなった段階から少しずつ筋力強化を行っていくことが大切になってくるのです。

  肉離れを予防するためにもハムストの筋力強化は必要不可欠



  



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