上手くなるコツがあるならそれはコツコツやること

2021年には母校である静岡高校の監督に就任。その夏にはいきなり甲子園出場も果たしているが、この時は6試合でわずか1失点という危なげない戦いぶりだった。しかし監督として初めて臨んだ甲子園でもまた野球の難しさを知ったという。
「前任の栗林(俊輔)監督が本当に毎年しっかりしたチームを作られていましたし、選手たちも甲子園に出るだけじゃなくて甲子園で勝つんだという意識を持っているなと感じました。それでいきなり甲子園にも出させてもらいましたが、今振り返ると自分は焼津水産、島田商、静岡高校と最初は結果が出て、その後苦しむというパターンですね(笑)。甲子園に出たチームはディフェンスがしっかりしていたので、すごく試合を組み立てやすかったです。だから甲子園でも勝てるチームだったと思うんですけど、そこは自分の力不足を感じました。選手たちには『いつも通りやろう』という話をしていたのですが、あの年は無観客である意味独特の雰囲気で、それに飲まれてしまったというのもあるかもしれません。エースの高須(大雅/現・明治大)が静岡大会では1点もとられていなかったのですが、甲子園では全く本調子じゃなくて、先に点をとられたことで野手も焦ってしまった部分があったと思います。普段では出ないようなミスも出ました。ミスが出ても最終的には勝てば良いということをもっと選手に伝えられれば良かったなとも思います。静岡大会で上手くいきすぎていたのが逆にマイナスになった部分もありましたね。色んな意味で悔いが残る試合でした」
池田監督が就任してからの甲子園出場は2021年夏だけだが、その後もコンスタントに上位進出を果たしており、強さは維持し続けているように見える。しかしその中でもコーチを務めた時とは違う難しさも感じていると池田監督は話す。
「静岡高校で野球をやろうという選手は能力も高いですけど、それ以上に意識の高さを感じることが多いです。先で野球をやりたいという選手も多い。ただそういう選手たちだからこそ、遠回りすることを凄く恐れるのはあると思います。結果が目に見えづらいことを続けることが苦手だなというのは感じます。合理的にやりたい、時代の先端を行くような取り組みが大事、みたいなことはありますね。最近は『強くなる、上手くなるコツがあるならそれはコツコツやることなんじゃないか?』というのが自分の口癖です(笑)。ボールの握り方、ステップの踏み方が乱れてもできてしまうかもしれないけど、大事なところでボロが出るのはそういう細かいところですよね。誰でもできることを誰よりも丁寧にできるか。そんなことを最近はよく言っています」
ここ数年、あらゆる高校に指導に訪れているイチロー氏も、合理的に失敗や無駄がなく成果に辿り着いたとしても深みは出ないと話しており、「遠回りこそ一番の近道」という言葉を残している。池田監督の話もそんな言葉に通じるものがある。合理性が求められる時代だからこそ、コツコツやることが大事。これも現代の高校野球における真理の一つと言えそうだ。(取材・西尾典文/写真・編集部)
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