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【松山商】踏み出した改革への第一歩/「今」を見た指導でなければ古豪復活はない

2024.5.3

「今」を見た指導でなければ古豪復活はない

私が見ている松山商は、輝かしい歴史の延長線ではなく、私が預かる手前の部分から始まっている。そして、そこにある問題点をしっかり見ていかないかぎりは、状況は改善されない。私が赴任した当初、いろんな松山商の関係者と話をすると、かつての栄光の歴史について話をしてくださる方はたくさんいた。過去の戦績を語ることで、松山商への熱い思いを私に伝えようとしてくれたのかもしれない。ただ、私が見なければいけないのは、松山商の「今」や「これから」なのである。

私は、日頃から「今はどうなのか」を大事にしている。過去の栄光を見て今に繋がってくることが、果たしてどれだけあるのだろうか。だから私は今を大切にして、今を頑張ってくれている選手たちをしっかり見ていきたいと思うのだ。

まさしく窪田監督の言われた「松山商の野球を探すなよ。時間の無駄だ。今、現場を預かってくれている監督と、頑張っている選手がやってくれている野球が、松山商の野球なんだ」というひと言に尽きる。おそらく窪田監督も、母校がなかなか上手くいかない理由を考えていらっしゃったのではないだろうか。
現状がどうなのかということにしっかり目を向けて、何が足りないのかを考えて取り組むことができないと、強い松山商は戻ってこないと私は思っている。

私が松山商の寮に来た時には「スマホの所持も禁止」といった寮の中でのルールがいくつもあった。たしかに、それらを実行できる高校生は素晴らしいのかもしれない。しかし、生活の場である寮において、決まりやルールに縛られて毎日の生活を送ることに精一杯なようでは、グラウンドに出ていくための活力を
養うことにはならないのではないか。

私は、現在の松山商には「今を見たやり方」が必要だと思っている。だから、前任校の時とはまったく雰囲気も違うし、私にとってはもはや前任校でのこともすでに「今」ではない。松山商は這い上がっていかないといけない今だからこそ、私もエネルギーをフルに使って野球部の指導に当たっている。とにかくパワー、エネルギーにあふれているチームであるべきだ。「あと一歩」とか「あと二歩」という考えではなく「あと100歩」ぐらいの気持ちがなければ、とても松山商ほどの伝統校を復活させることはできないだろう。

(続きは書籍でお楽しみください)

【目次】

第一章 今治発、松山へ/夏0勝から這い上がった野球人生
第二章 伝説の古豪と愛媛県の高校野球/「夏将軍」松山商の今と昔
第三章 寮改革から始まった再建への道/名門復活への「はじめの一歩」
第四章 大原則は「平等」と「公平」/選手に寄り添う指導
第五章 自分の力を出す、相手が嫌がることをやる、意表を突く/愛媛県をリードする野球のカタチ
第六章 「オオノの考え」――基本・守備編/「守りのチーム」の骨格を作る
第七章 「オオノの考え」――投球・打撃・走塁編/自己を確立して投げ、意図を持って打つ
終章 高校野球新時代/野球の素晴らしさを見ていく時



著・大野康哉(松山商野球部監督)
竹書房
定価1980円+税
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