トレーニング

軸足を踏んで立つことからスタート|140キロ投手育成論(3)

2023.9.19

2年半(880日)という限られた時間で、投手のパフォーマンスを向上させる。
140キロは努力で目指せる時代!「140キロ」をひとつの目安に定め、その考え方やトレーニング方法を紹介している本「880日で作る140キロ投手育成論」(竹書房)。この本の第一章「投動作を極める」の中から、今回は「軸足を踏んで立つことからスタート」「母指球ではなく薬指側で立つ」「投球は片足から片足への運動」を紹介する。ぜひ参考にして欲しい。


第1章―投動作を極める―

軸足を踏んで立つことからスタート

最大並進運動を生み出せるかどうかは、軸足での立ち姿勢からすべてが始まっている。
プロ野球選手による技術書などを見ると、「まずは立つこと。立った姿勢がぶれると、コントロールがぶれてしまう」といった解説を目にすることが多いが、まさに同感である。ピッチングのスタートポジションであり、“始まり”がいつも違えば、ゴールとなるリリースの位置がずれるのは当然のことであろう。

立ち方に関して、私が重視しているポイントは次のふたつだ。

ひとつめは、前足を上げることで立つのではなく、軸足で地面を踏む力を利用して立つこと。軸足を踏み込めば、逆足はその反動で上がってくる。「地面反力」とも表現されるが、地球の力を最大限に活用する(写真①)。

写真①:「地面反力」を最大限活用する

わかりやすく言えば、軸足の踵を小さく浮かして、プレートを“グン!”と踏むようなイメージだ(ただ、高校野球の場合、この動きがボークになることもあるので要注意)。踵を浮かさなくても、踏む感覚を得ることはできるので、キャッチボールの段階から意識をしてみてほしい。
外から見たときの立ち姿勢は同じように見えたとしても、投手本人の感覚はまったく違う。軸足の股関節周りから足裏まで、力を感じた状態で立てるかどうか。軸足で立って終わりではなく、立つことがスタートであり、この立ち姿勢の良し悪しが最大並進運動に大きく関わっていく。

母指球ではなく薬指側で立つ

ではポイントのふたつめ。軸足で立つときに、足の裏のどこに重心を感じたほうがいいか。
「もっとも力が入りやすい」という理由からか、「母指球に重心を乗せなさい」という指導を耳にするが、私自身は「中指・薬指から踵にかけたラインを意識したほうが、立ちやすく、並進運動にも移りやすい」と考えている(写真②)。

写真②:中指・親指から踵にかけたラインを意識して立つ

母指球に重心を感じると、並進運動に入る際にどうしても膝が捕手方向に入りやすくなるのだ。感覚的には、足裏の薬指側から人差し指、親指側のほうに徐々に重心を移しながら、並進運動に入っていくほうが、膝が立つ感覚を得やすいのではないだろうか。
勘違いしてほしくないのは、足の裏全体に圧をかけながらも、気持ち的にはアウトエッジに重心を感じておく、という意味だ。薬指側に乗せることばかり意識して、頭が軸足の外側に外れると、力が逃げてしまうことになる。

なお、バランス感覚を養うために、不安定なバランスディスクの上で立つトレーニングを見るが、あまりおすすめしない。「倒れたくない」とじっと耐える力を養っているようなもので、ピッチングの動作にはつながりにくい(子どもたちが遊び感覚で使ったり、足首を捻挫したあとのリハビリ等に活用したりするのはOK)。足裏と地面が接地していないことは、実際のピッチングではありえないことで、軸足で踏み込む感覚を得にくいのではないだろうか。


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