学校・チーム

【興国】「全員ができること」をチーム全体に浸透させる

2022.11.5

自分ももっと経験を積まなければいけない



昨夏の府大会での躍動で、“興国は強くなりましたね”と声を掛けられることが増えたという。だが、実際はチームが着実に右肩上がりで成長している訳ではない。理想と現実がなかなかマッチングしないのが現状だ。
「(強くなったと言う人に)一度グラウンドに練習を見に来てもらいたいですね、本当に(苦笑)。実際は教えがいがあるというか、こちらも勉強していかないとチームは後退していく一方です。全員を同じ方向に向かせるのは難しい。
野球ノートに書かせること自体がもう古いのかなと思って、アプリなどを駆使するのも手なのかと思うこともあります。でも僕は生徒と心で繋がりたいので、携帯で繋がるのは無機質な部分もあるようにも思えるんです」。

大阪で戦う、頂点を目指す以上、避けて通れないのは大阪にひしめく強豪校の存在だ。特に全国屈指の強豪でもある大阪桐蔭のような学校に勝つのは本当に大変なことだと指揮官はうなずく。
「現状、生徒たちにも言うのですが、正直なところ今のままでは100%勝てません。でも1%でも勝つ可能性を高めようと思うなら、やったことのないことにトライしていかないといけない。せこい野球ではないですが、スキを狙ってあり得ない攻撃をするとか考えることはありますが、やっぱりバッテリーを中心にしっかりした野球をやらないと勝てません。ピッチャー、キャッチャーがいない中では不可能。
チーム作りというのは、その中での話になってきます。粘って勝機を作るならピッチャーありきですよね。勝てると思っていなくても、対抗心というか“やったろか”と思える子が少ないのは事実です。古いけれど、負けん気というか“負けてたまるか”と思える子は少ないですね。勝とうとすればするほどしんどいのが正直なところです。個々の能力だけ見ても勝ち目はないですから。そういう意味でも僕ももっと経験を積まなければいけません」。

今、野球部に限らず学生スポーツの部員は、部員が極端に多いか少ないかの二極化になりがちだ。部員が多い部へは批判的な意見も散見される中、自主性などが問われていく世の中で思い悩む部分も多いという。

「色んなヒントがあった上での自主性だと思うので、一歩間違えると自主性って指導放棄のようにも見えてしまいますよね。ウチのようなチームだと(自主性を敷くと)選手が育たない。結果は残したいが、甲子園に行ける、勝てる、勝てないは度外視して、5年後、10年後にそれをすることで社会に求められる人材になれるのであれば自主性というのは良いと思うんです」。

さらに先を見据えた時、10年後や20年後、どうなっていたいか。部としてもどんな有り方になっていたいのかを考える時ではないか。喜多監督は今後について危惧する部分も多いと見ているが、それでもここに集まる生徒たちと同じ方向へ走っていきたい―。
大人数だからこそ、見ることができる夢もある。そんな指揮官の目線の先には、大きな希望や可能性がたくさん詰まっている。(取材・文:沢井史/写真:編集部)

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