トレーニング

【新しい投手指導の教科書】走ることの意味

2022.9.2

筑波大学硬式野球部監督でもある川村卓准教授の著書「新しい投手指導の教科書 これからの野球に必要な『投手兼野手』の育成術」(カンゼン)から、現場での投手育成に役立つ部分を抜粋して紹介したいと思います。今回は第4章「下半身と上半身をつなげるトレーニング」の一部を紹介します。


走りと投球はつながっている

「投手は走り込みが大事」とは昔からよく聞く格言であるが、最近は「走り込み不要論」を唱えるプロ野球選手も出てきている。そもそも、「走り込み」の定義が難しく、どのぐらいの量であれば、走り込みと言えるのか。これを議論するには、かなりの分量が必要になるので、本書では「走る意味」に絞って解説したい。

私自身は、投球とランニングは似た動きだと考えている。体重を移動させながら、上肢を大きく動かす。その中でバランスを保ちながら、力を発揮していく。足を上げたり、腕を振ったりする中でバランスが崩れるような選手は、投球フォームにおいてもそれに近い課題が見えてくるものだ。これまでの経験上、走り方が良くなることで、フォームのバランスも改善されていく投手が多い。

野手兼投手の育成を考えたとき、野手はノックや走塁練習の中で短いダッシュを繰り返しているが、どうしてもプレー中の動きなのでバランスを意識した走りにはなりにくい。無理な体勢で走らざるをえないときも必ず出てくる。投手としての活躍も望むのなら、体のバランスを整えるためのメニューも入れたほうがいいだろう。

走りのトレーニングは、大きく考えて次の3つに分けることができる。

● 短距離=ATP– CP 系( 短い時間で爆発的なパワーを発揮)
● 中距離= 乳酸系( フォームのバランスを整える)
● 長距離= 心肺機能、有酸素系( 体力強化)

バランス良く取り組むことを大前提としたうえで、ひとつ注意点を紹介したい。「体のキレを出したい」「爆発的なエネルギーを生み出したい」と短距離走を好む投手が多いが、速く走ろうとすればするほど、ヒザを伸展させる動きで力を出そうとしがちだ。これまで述べてきたように、投球での体重移動時において、大事なのは膝関節ではなく股関節を中心にして動くことだ。股関節周りの大きな筋肉を使うことで、力を発揮しやすくなる。陸上選手のように、正しいフォームで走っていれば問題ないが、野球選手はどうしても膝関節で頑張ろうとしてしまう。

これは、ラダートレーニングにも言えることで、ヒザ下だけで細かく動かそうとする選手が多い。投球フォームにはつながらない動きのため、注意をしたほうがいいだろう。

おすすめしたいのは、ポール間走のような中距離系を取り入れることだ。設定タイムを入れると、がむしゃらに走ろうとしてしまうので、タイムは気にせずにフォームのバランスを意識する。具体的に言えば、みぞおちから足が生えている感覚で股関節を使い、足を回転させることだ。そして、地面を蹴るのではなく、地面からの反力を得ながら進んでいく。動画で自分の走りを確認するのもいいだろう。

ただし、サーフェス( 地面の状態)には気を配っておきたい。土か芝生かコンクリートか、あるいは陸上選手が走るようなタータンか。反発の強いコンクリートやタータンは、足への負担が強くなるので、走りの量とスピードには十分気をつけたい。

その一方で、こんな考えもある。プロ野球が使用する球場のマウンドは年々硬くなっていて、地面からの反力を使える投手ほど、出力を高めやすい。子どもたちにはまだ必要ないが、高校生以上で体ができてきた投手は、あえて硬いサーフェスで走るのもひとつのトレーニング法と言えるだろう。

*続きは書籍でお楽しみください。

内容紹介

科学的アプローチから導く最前線の野球コーチング本
「野手兼投手」の育て方にクローズアップ

二刀流は当たり前?
ケガ予防&投球数制限対策に
エース1枚から継投で勝ち抜くチーム作りを

スペシャルインタビュー
工藤公康(元福岡ソフトバンクホークス監督)

<目次>
第1章 投手と野手の違い
第2章 一流投手のメカニズム
第3章 タイプ別の指導法
第4章 下半身と上半身をつなげるトレーニング
第5章 実戦で力を発揮する方法

書籍情報

川村 卓
カンゼン
1800円(税別)




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