トレーニング

【セミナー】甲子園強豪校のトレーナーが語る、身体づくりのアプローチ法とは?

2015.9.10
当日は33名の野球関係者が集まり、具体的な練習メニューに耳を傾ける



今や甲子園常連校となった健大高崎高校と花咲徳栄高校野球部 他のトレーナーを務める、塚原謙太郎氏のトレーニングセミナーが9月5日に開催された。30名を超える野球指導者たちが参加し、強豪校で導入されているトレーニング現場の話で盛り上がった。ここでは、当日の様子を3回に分けて紹介していく。


■「ケガをしない身体づくり」というアプローチがまず大前提にある

ピラミッドの土台部分は基礎体力と基礎技術の向上

 第一部では「勝つチームに共通する、一年間のトレーニング計画の立て方」というテーマで、主に重点的に鍛えるべきポイントが紹介された。

 トレーニング計画を立てていく上で大切なのは、まずは選手個人の基礎体力をつけること。その土台がないまま、野球の細かな専門技術や試合における戦略・戦術などを身につけても効果は弱いということだ。特に中学校から上がったばかりの身体が出来上がっていない新入生などには、様々な方法で「基礎体力をアップさせる」ことに時間と労力を割いているということが説明された。

 では、具体的にどんな基礎体力をつけているのかというと、大前提にあるのはケガをせず、正しい動きをしっかりと身につけられるか。そのためにはまず「身体の柔軟性を高める」ことから始めているそうだ。短い2年半の高校野球生活においてケガをするというのは大きなハンデ。「正しい動きが身につけられれば、しっかりとした野球の専門技術も習得し、結果パフォーマンスもどんどん高まっていく」という経験から裏打ちされた確固たる信念が感じられた。


■腰痛などあらゆるケガの予防につながる「開脚」

ケガをしないための柔軟としてまずはこの姿勢を目指す

 塚原氏が掲げるトレーニング骨子とはどんなものなのか。ケガ予防を防ぐ一番のポイントは「開脚」にあるという。選手たちに日々口酸っぱく徹底させている。理想の形は「土」の字。両手両足がベタっと地面に付くくらいまで柔らかい身体にする。身体が硬い子でも毎日意識して柔軟をしていれば、入部後半年くらいで「土の字」ができるようになるという。股関節を柔らかくするというよりは、股関節の周囲の筋肉を柔らかくすることで、腰痛予防にもつながるそうだ。健大高崎の選手たちはこのトレーニングアプローチをここ数年続けているが、腰痛を訴える選手はゼロ。かなりの成果が出ていると自負する。


サプルバットを使って説明する塚原氏

 股関節ともう一つ重要部位である肩甲骨はキネティックストレッチと言われるストレッチを実施。健大高崎では塚原氏自ら考案した、サプルバットという130センチ、900グラムの特殊な棒を使って行っている。この棒の利点は二つあり、一つは意識下にない状態で筋肉をストレッチできるということ。何もない状態でストレッチをした場合は、伸ばす側の筋肉をどうしても意識してしまい、最大限に伸びなかったり効果が薄かったりするのだが、この棒を使うことで、無意識のうちに勝手に引っ張られて、筋肉が伸縮収縮する。また、二つ目の利点は何もない状態でストレッチさせると、生徒たちは遊んでしまうがちだが、棒などの用具を使うことで楽しみながらストレッチを行うことができる。ウォーミングアップ時は15種目ほどアクティブな動きを取り入れて柔軟性を養っている。


■正しい動きを身につける上で大切な「骨で立つ」

5点が全て一直線になるのが理想の立ち方

 健大高崎では、柔軟性ともう一つ徹底していることがある。それは「骨で立つ」ということだ。

骨で立つと言われてもイメージが沸きづらいと思うが、具体的には肩幅くらいのスタンスを取り、「耳の穴—肩峰(鎖骨の中心)—大転子(大腿骨付近)—腓骨頭(膝の横にある出っ張っている部分)—外果(くるぶしから指2本分前)」これが一直線になるように立つのが理想な立ち方である。

ポイントは膝。立ったときに膝が後ろ側に入らないように、ふっと軽く力を抜くイメージ。このポジションを常に獲得できるように、意識しながらトレーニングしていくことが大切である。

こうして、新入生はまず股関節、肩甲骨中心の柔軟性を高め、しっかりと「骨で立つ」ことを身につけさせていく。しっかり立てるようになると次のステップとして、正しい姿勢で歩く、そしてゆっくり走る、へと発展させバランスよい姿勢を早い段階で獲得していく。


次回へ続く


■講師プロフィール
塚原謙太郎
1974年5月4日生まれ、東京都出身。都立淵江高校~東北福祉大~日本生命。社会人で5年間プレーしたのち、トレーニングの専門学校へ入学。現在は健大高崎のトレーナーを務めている。



  



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