トレーニング

制球力を向上させるための投球動作改善(4)

2015.5.21

 こんにちは。野球塾リトルロックハートの大友です。K君のコーチング4回目となる今回は、並進運動の行い方を中心に進めていきました。

 みなさんは並進運動と横移動の違いはご存知ですか?
 指導者やトップレベルの選手の場合、この違いを正しく理解していなければ、投球動作内で適切なメカニズムを構築できなくなってしまいます。

 横移動というのは、ただ単に体が横に移動する動作のことです。一方の並進運動(並進移動)というのは、体のあらゆる部分が同じ速度で横移動する動作のことです。つまり並進運動中に体のどこか一カ所でも先走ってしまうと、それは並進運動ではなく、ただの横移動になってしまうわけです。

 ではなぜ横移動ではなく、並進運動でなくてはダメなのでしょうか?
 その理由は並進運動によってしか得られないものがあるためです。その得られるものとは回転運動です。並進運動は、振り上げた非軸足を接地させた瞬間に回転運動に変身します。並進運動を良い形で進められるほど、強い回転エネルギーを得られるようになるのです。一方の横移動は、非軸足を接地させても回転運動に変身することはありません。

 投手にとっての回転運動とは、非軸足接地後に非軸脚側の股関節を回す動作のことです。腰でも骨盤でもなく、回すのあくまでも股関節です。だからこそ股関節は回旋動作ができる形状になっているのです。

 では続いて、並進運動をスムーズに行うための練習方法を学んでいきましょう。

 まず足は肩幅にし、普通に立ってください。そして上半身と軸脚を、軸脚側に傾かせることなく非軸脚を投球時のように高く振り上げてください。すると、軸脚1本で立つことは絶対にできず、体は自然と非軸脚側に倒れていくはずです。これが適切な並進運動の行い方です。

 注意点として、この時動かすのは軸脚側の股関節だけにしてください。膝を曲げていってしまうとディッピング動作という悪い動きになってしまい、パフォーマンスは低下してしまいます。軸脚側の股関節で「く」の字を描くようにして並進運動を進めていきます。ちなみにステップ幅の広さは股関節で描く「く」の字の折れ目の深さで調節していきます。

【並進運動の練習方法①】足を肩幅にし、普通に立つ

【並進運動の練習方法②】上半身と軸足を傾かせることなく足を上げる

【並進運動の練習方法③】体が自然と倒れ、非軸足側に落ちていく


 投球動作のステップは、非軸脚を前へ出して歩くように行うのではなく、軸脚側股関節を「く」の字に折ることにより、落ちるような感覚で進めていくようにしてください。非軸脚を振り上げ、その脚の重さで非軸脚側に倒れ落ちていく感覚です。そうすれば非軸足の接地時に得られる位置エネルギーも大きくなり、位置エネルギーの増加は球速アップに直結していきます。



 上述したような良い形で並進運動を行えると、余計な動作が加わりパフォーマンスを不安定にすることもなく、余計な動作がない分体力の消耗も抑えられるようになります。投球動作を観察しているとヒップファーストフォールではなく、ヒップファーストウォークになっている選手を多く見かけます。歩くのではなく、落ちていく感覚を養うためにも、K君がチャレンジしているこの練習方法を試してみてください。


軸脚・・・軸脚全体
軸足・・・軸足のスパイクを履いた足部




  



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