トレーニング

心臓震盪を知っていますか

2015.5.25

 野球ではプレー中にボールが身体にあたってしまうことがありますが、特に気をつけなければならないのが頭頸部への打撲、そして胸部付近への打撲です。心臓は骨格に守られていますが、胸部付近(心臓の真上)に衝撃が加わったことにより心臓が突然停止してしまうことがあります。これを心臓震盪(しんとう)といいます。

 野球ではボールが胸部付近にあたる場面、すなわち守っている際にライナー性の打球が直接あたったり、イレギュラーバウンドが胸にあたったりといったことが考えられます。また塁上での交錯プレーなどでスライディングした選手の膝が胸にあたったりといったことでも起こることがあります。先日フットサルの試合中に相手選手の放ったシュートが胸部にあたり、心肺停止状態になった事例が報告されていました。こちらのケースでは現場に居合わせたトレーナー、周囲の人たちの連携により一命を取り留めたということですが、迅速な対応が功を奏した一例といえるでしょう(参考リンク:試合中のシュートで心臓停止……九死に一生を得た関東リーガー)。http://www.futsaledge.jp/archives/5179

 心臓震盪は、衝撃があたる場所、あたる強さ、あたるタイミングの3つの条件がそろうと発生するといわれています。あたる場所は心臓の真上、あたる強さは強くすぎても弱すぎても起こらず、さらに一定の拍動を行う心臓に、あるタイミング(心電図上である決まった位置)で衝撃をうけると発生します。骨格が十分に発達していない子どもや十代の若い選手に多くみられるのは、肋骨などが柔らかく、受けた衝撃が心臓に伝わりやすいからだと考えられています。心臓震盪は衝撃の3条件がそろうと不整脈を発症し(心室細動:心臓がけいれんを起こし、血液を全身に送り出すポンプ機能を失う)、脳に酸素が行き届かない状態になります。酸欠のために脳細胞が死滅し、脳死状態になってしまうまでの時間はおよそ3分といわれており、倒れた状態からすぐに救命措置をとらねば助かる命も助からなくなってしまいます。

 選手が胸部付近に衝撃を受け、その場に倒れ込んでしまったらまず状況を確認し、反応と正常な呼吸が無ければ119番通報とAEDの手配を頼んで、直ちに心肺蘇生法を開始します。胸骨圧迫を行い、並行してAEDを準備してすぐに除細動を行います。電気ショックによる除細動はけいれんを取り除き、正常な拍動が戻ってくることがあります。救急車がくるまでの一時的な措置ですが、救急車の現場到着時間の平均は8.5分(平成25年)であり、猶予時間を考えると「すぐに蘇生措置を行う」ことが求められます。

 こうしたケースはあまり多くありませんが、野球でのプレー中の事故なども散見されており、心臓震盪に対する正しい知識と適切な対応をぜひ理解してもらいたいと思います。

胸部付近への打撲は特に注意しよう




  



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