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9年振りに秋季東北大会を逃した県内最強の聖光学院。一冬を越えた新チームの今。

2015.5.19
 15日から始まった春季東北大会福島県予選。すでに1回戦が消化され、19日には2回戦を控える強豪聖光学院。一冬を超えて夏を目指す新チームを追った。


 やはり質の高いチームに仕上げてきた――。

 春の県大会出場を懸けた県北支部予選から、聖光学院の強さは群を抜いていた。4試合中3試合でコールド勝ち。決勝戦は二本松工相手に20対0と圧勝。予選では準完全試合にサイクル安打と、強者の戦いを遺憾なく見せつけ順当に第一代表を掴んだ。
 夏の福島県大会8連覇など、聖光学院は県内で無理の強さを誇ってはいる。ただ、背景をたどれば、選手や指導者の能力の高さだけでなし得たものではないことが分かるはずだ。
 
 彼らは常に、敗戦から這い上がることで根っこを太くしてきている。近年なら、去年と今年のチームがそうだ。

 2013年の秋。県大会準決勝で日大東北に敗れ、県内の公式戦連勝記録が95でストップした。斎藤智也監督は、「負けるべくして負けた試合。この敗戦を糧に成長してほしい」と前を向いたが、当時の選手たちは「先輩たちに申し訳ない」と敗戦を引きずった。
「こいつらは勘違いをしている」。危惧感を抱いた斎藤監督は、練習を一切禁じ、選手たちにグラウンドや学校周辺のゴミ拾いなどの環境整備をすることを命じた。
「それまで5季連続で甲子園に出て、彼らも『聖光に行けば甲子園に出られる』という甘い考えがあった。それじゃあ、本当の強さを手に入れることはできません」
 この荒療治は効果を発揮した。新チームで最初の主将を任された伊佐木駿など中心選手たちは、「あの負けから自分たちを一から見直せるようになった」と立ち直り、夏に戦後最多タイ記録の8年連続甲子園出場、全国ベスト8と十分な結果を残した。
 当時の2年生メンバーで、新チームでは主力選手となった藤田理志はこう言っていた。
「甲子園に出た2年生メンバーたちの経験を新チームに生かしていきたいです。自分たちの目標はあくまでも日本一です。ベスト8で勘違いしていたら秋はやられてしまうんで」
 気持ちを引き締めてはいた。しかし、昨年の秋は準々決勝で日大東北に再び苦杯を嘗めさせられ、9年ぶりに東北大会出場を逃した。
 
 長いオフになるねぇ――。
斎藤監督は苦笑いを見せていたが、新チームの可能性をはっきりと述べてくれていた。
「今年は国体に出られるから2、3年生で切磋琢磨させて新チームにプレッシャーをかけてきたつもりですけど、まだあと1本というか、粘りが足りないですね。ここで勝っても東北大会で負けていたでしょう。でも、今年は可能性があるチーム。今まで以上にスケールの大きさが感じられるんで、もっと力をつけられるチーム作りをしていきたい」
 今年のチームには、昨夏の甲子園を経験した藤田、捕手の佐藤都志也。そして、全国の舞台で好投した今泉慶太もいる。彼に加え、森久保翔也、野嵜洸大の3投手は最速140キロ前後のストレートを誇る。
 指揮官が望む「スケールの大きなチーム」。この春、選手たちはパフォーマンスと結果で、その答えを出さなければならない。


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