軟式野球は野球を諦めないための一つの選択肢
高校で野球を諦めざる得ない選手の数は一体どれほどに登るだろうか。
単純な技術の問題、怪我、金銭的な問題、時間の問題。その背景は様々だが、それだけ大学で硬式野球部を続けるという選択肢のハードルは高いのかもしれない。
8月下旬に立命館大学原谷グラウンドで行われた大学軟式日本代表選考会では、“野球を諦めきれなかった”58名が全国から集まった。
数百人の応募者から選出された78名の大学軟式日本代表候補たち
今回の大学軟式野球日本代表選考会は、1995年の台湾遠征を皮切りに国際試合をスタートさせた。近年では、アメリカや台湾といった国と技術交流も行っており、選考会の応募数も各地域の書類選考も含めれば数百人を超えるなど、少しずつ地位を固めつつある。その競技レベルも年々向上の一途を辿る。実際にこの日行われた選考会でも、元甲子園球児や、140㌔を越す直球を投げこむ投手など、実力派の選手達が汗を流していた。
代表監督を務める小野昌彦氏は軟式野球の現状をこう話す。
「軟式と硬式は必要な技術が全く異なります。それに体に掛かる負担も軟式は少ないので、怪我をして硬式野球ができない選手が軟式を選ぶというケースも増えてきました。ただ、競技としての認知度や立ち位置はまだまだ課題のほうが大きい。私達に賛同していただける企業さんや、各団体も増えてきてはいますが、今後は日本だけで物事を考えるのではなく、アメリカやヨーロッパといった異なる野球文化の国と協力しつつ、競技としての魅力を訴求していく必要性を感じています」
もう一つ、ここ数年で卒業後の就職という出口に関しても道が開けつつある。
「大学卒業後の進路に関しても、硬式と比べると、まだまだ恵まれているとは言えない状況です。ただ、ここ数年で社会人チームや一般企業への就職など軟式野球後の進路も少しずつ開拓されつつあります。企業さんの担当と話していても、『軟式を舐めていたけど、しっかりとした生徒が多い。もっと早く採用すべきだった』という声もいただいています」
大学軟式野球では、指導者の数が充分に足りているとは言い難い。1チームに一人の指導者体制を作れていない学校が大半を占める。しかし、それだけに生徒一人ひとりが自分達で考えて野球に取り組むという思考力を鍛えられる環境がある。そのことが、企業人として必要な思考や、人間力形成に繋がっているという意見もあった。
今後の大学軟式野球が抱える課題は、大学野球単体ではなく、軟式野球全体で考えていく必要があると小野氏は提言する。
「硬式を見ても、社会人チームの数は減少し今後もその傾向は一層強くなる。そんな硬式野球の現状も踏まえて、軟式野球は、競技者が上を目指せる環境が必要だと考えています。具体的に言うと、大学や社会人など全てのチームの頂点を決める日本選手権のような大会を開催することです。私個人の考え方では、実力がある選手達が高校で野球を辞めてしまう現状は嘆かわしいものがあります。そんな生徒達にとって、野球を諦めないための1つの選択肢として軟式野球はありたい。そのための環境づくりに今後も励んでいきたいと思いますね」
全日本大学軟式野球連盟HP
http://junbf.jp/