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【飯田哲也の目】状況に応じたバッティングができる井端選手。打球に対する予測と読みが鋭い菊池選手や大和選手は守備のお手本

2014.10.23

 野球選手にはそれぞれ、タイプがあります。全員が「何をやっても一流」という選手になれるわけではなく、バッティングで言うと全員がバレンティン選手(ヤクルト)のように本塁打を量産できるわけではありません。大事なことは、自分がどういうタイプの選手を目指していくのかを見極めること。たとえば、明らかに力が劣っているのに「ホームランバッターになりたい」というのは叶わない夢ですが、それならばバントや小技を絡めて足で勝負していくのも一つの方法でしょう。そうやって「自分はこれを磨いて生きていくんだ」というものを見つけてほしいと思います。

 そういう意味でいい見本として挙げたいのは、井端弘和選手(巨人)ですね。ここ数年、期待の若手と言われる打者を見ると、四番のスラッガーを目指しているようなスイングをしている人が多いですが、井端選手のように状況に応じたバッティングができる選手を目指す人がいてもいいんじゃないのかな、と思います。

 井端選手は攻守に素晴らしい技術を持っていますが、それを可能にしているのはやはり練習です。バッティングでは、どんな球でも逆方向に打っていくんだという姿勢で練習しているからこそ、試合のいざという場面でも右打ちができる。おそらく本人も、自分にはそういうバッティングが必要だということを自覚しているのでしょう。また、守備というのは特に、普段の積み重ねが大事なもの。バッティングは慣れてきたりとか、ふとした瞬間にコツをつかんで打てるようになることもありますが、守備は練習しなければ上手くなりません。逆に、しっかり守れる選手というのは、息の長い選手になる可能性も高まると思います。

 守備面をピックアップすると、菊池涼介選手(広島)などはいい選手ですね。彼は守備力でレギュラーを獲ったようなものだし、二塁の守備が良くなるにつれてバッティングも良くなっていった印象があります。守備が上手いと僕が思うポイントは、打球の読みや反応です。グラブさばきに関しては本人の感覚によるところが大きいですが、どこへ打球が飛ぶのかという予測やスタートの良さなどは、教わってもなかなかできるものじゃない。バットとボールが当たる瞬間にはどういう打球になるのかを見極めていなければならないし、そこまで突き詰めるためには普段から一歩目を意識する習慣が大事です。

 一方の外野手で言うと、「上手いなぁ」と思うのは大和選手(阪神)。彼の良さも結局は、打球の予測や反応ですね。守備範囲というのは決して、足の速さで決まるわけではありません。いかに落下地点まで一直線に向かい、ロスなく入れるか。また彼の場合は試合中、「知らない間にそこにいた」というケースがよくあります。一般的には、飛び込んで捕れば「上手い選手だ」と判断されがちですが、本当に守備の上手い選手というのは、上がった瞬間はヒットに見える打球に対し「何だ、普通のフライか」と思わせてしまう。そうやって、打球を想定できているんですよね。

 守備が上手くなりたいと思ったら、反応を磨いていくことが大事です。まずは練習で一歩目に集中し、いろいろな打球に対して勝負をかけて捕りにいってみる。そして「ここまでの打球なら捕れるぞ」という自分の限界を知っておくと、勝負して捕れるものなのか、それとも捕れないものなのかを判断できるようになります。最初から「無難にこなそう」と考えていたら、上達はしないですよね。

構成=中里浩章

<プロフィール>
飯田哲也
スポーツコメンテーター。1968年東京都出身。1987年に捕手としてヤクルトスワローズに入団、主に外野手としてヤクルトの1番バッターを長く務めた。2005年からは2年間楽天イーグルスに在籍。2006年に現役を引退すると、古巣ヤクルトで2013年まで守備・走塁コーチを務めた。

飯田哲也オフィシャルブログ,/a>


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