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【日大藤沢】山本秀明監督|大舞台、いつもの自分を信じきれなかったことから起こった失敗

2025.5.28

改めて感じた、指示を徹底することの大切さ




20年以上監督として指揮を執っていても、いまだに難しいことがあるという。それは想定できる指示を徹底すること。

「近いところだと2022年秋の慶応さんとの試合ですね。5点リードされていたんですけど、田上(優弥/2023年巨人育成4位))がスリーランを打って2点差まで追い上げて、9回裏も1点差にしてツーアウト満塁でまた田上という場面でした。この時、相手のサードが警戒して凄く後ろに守っていたんです。だからホームスチールを仕掛けるとか、田上にセーフティバントをさせるとか色々考えました。結局田上に任せようと思ったのですが、相手のピッチャーの松井(喜一)くんが制球を乱していて、内角はシュートしてくるから死球が怖い、スライダーは引っ掛けて暴投があるという状態だったのに、そういうことは何も指示しなかったんです。案の定、初球は外角のストレートで凄く良いボールが来て空振り、次も外角のストレートで追い込まれて、一球見せ球のスライダーを挟んだ後にライトフライに打ち取られました。事前に松井くんの投球も見ていて、苦しい場面では外角のストレートで勝負してくるというのも分かっていたのに、それを指示できなかった。もし伝令を送っていれば打てたかもしれないなと悔やみました」

この春の県大会、川和との試合でも似たようなことがあった。延長11回にタイブレークで1点を勝ち越したあとのことだ。
「タイブレークは1点では逃げ切るのは難しい。それはいつも話していて、自分でも分かっていたのに、裏にツーアウトをとったところで安心してしまって、何も指示を出さなかったら三塁線を抜かれて長打にされて逆転サヨナラ負けです。この時も同点までは仕方ないから、ちゃんと長打を軽快して一塁線、三塁線を詰めるとか、外野を深くするなどしておけば1点で防げたかもしれない。後から振り返って足らなかったなと思うことはよくあります」

山本監督も話すように、後から振り返れば分かるということはどんな指導者でも多いのではないだろうか。ただもちろん長い指導生活からの学びを生かしている部分もある。

「若い頃は全て手取り足取り教えて、こちらが言えば言った分だけ選手が良くなると思っていましたが、今はそうとも限らないということは思うようになりました。もちろん言うべきことはありますし、教えることは必要です。ただどのタイミングでどう言うかというのは考えるようになりましたね。
試合でも力が明らかに上の相手に対しては、『当たって砕けろ』だけではなく、あらゆる方法を考えるようになりました。結果としては上手くいきませんでしたが、昨年夏の東海大相模さんとの試合ではそれまであまり投げていなかった投手を先発させて、はまりかけた部分もありました。そういうところは昔よりも少しだけ成長したのかもしれません」

山本監督の話にもあったように春の県大会は初戦で敗れて夏はノーシードとなったが、試合内容自体には手応えを感じた部分もあったという。その経験を糧に、日大藤沢がどんな戦いぶりを見せてくれるかが楽しみだ。(取材・文:西尾典文/写真:編集部)

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