トレーニング

“パワーポジション”に着目した新メソッドの生みの親 木村匡宏トレーナーってどんな人?《前編》

2021.2.3

東京都千代田区六番町、都心のいわばど真ん中とも言える場所に「IWA ACADEMY」が開設されたのは2016年3月のこと。小学生の子どもからシーズンオフには前田健太投手(ドジャース)などトッププロまでが訪れる施設となっているが、そのチーフトレーナーを務めるのが木村匡宏さんだ。近年はこれまで培ってきたトレーナーとしての経験をもとに「バッティング・メソッド」、「スローイング・メソッド」(東洋館出版社)という2冊の書籍も出版するなど、幅広く活動している。そんな木村さんにトレーナーになった経緯などについて聞いた。



-まず木村さんご自身が野球を始めたきっかけを教えてください。

小学校まではソフトボールと空手をやっていて、本格的な野球部に入ったのは中学校からです。空手も本格的にやっていたのですが、国体が地元の福島で行われることが決まっていて、その強化選手になると入学する高校が決まってしまうので、それよりも高校では野球をやりたいと思い、中学の途中からは野球に専念するようになりました。

-大学では慶応大学でプレーされていますが、当時から東京六大学や早慶戦に憧れがあったのですか?
六大学や早慶戦を知ることになったのは高校3年生のときです。地元の福島高校に進んだのですが、2年時に磐城高校で甲子園準優勝したときのメンバーで福島北で監督としても甲子園に出られた宗像(治)先生が赴任されました。宗像先生は早稲田出身ということで、作新学院で江川(卓)さんとバッテリーを組んでいて早稲田で助監督もされていた亀岡(偉民)さんが指導に来てくださることがありました。数日の予定だったのを亀岡さんに頼み込んで毎日早朝に指導していただき、チームも結果が出たんですね。ちょうどそのときにオール早慶戦(早慶のOBも参加する親善試合)が福島であって、東京の早慶戦も見に行かせていただいたりして、早稲田でやりたいと思うようになりました。

-慶応ではなく早稲田志望だったんですか?
そうなんです。Wの帽子をかぶることだけ考えていました(笑)。ただ二浪までしましたが、結局早稲田はどの学部も受からず、慶応の経済だけ合格したんですね。そこで早稲田とは縁がなかったなと思って慶応に進みました。


著書『バッティング・メソッド』『スローイング・メソッド』の制作には日本一の野球チャンネル「トクサンTV」全面協力で行われた。
著書『バッティング・メソッド』『スローイング・メソッド』の制作には日本一の野球チャンネル「トクサンTV」全面協力で行われた。

-大学でも4年間選手としてプレーしていたとのことですが、当時からトレーナーを考えていたのですか?
大学生のときはとにかくメンバーに入って神宮、早慶戦でプレーしたいということしか考えていなかったです。だから就職活動も、野球に早く集中するために決めてしまいたいということが先に頭にありましたね。野球やスポーツに携われるかなと思って受けたマスコミは受からず、最終的に信託銀行から内定をもらいました。ただ、中学時代からどうやったら上手くなるかというのを考えるのは好きで、雑誌で見た手塚一志さんの理論にすごく影響を受けて、大学時代は手塚さんのところに通っていました。

-では卒業後、いきなりトレーナーの道に進んだわけではないんですね。
卒業後は大阪の支店で銀行員をしていました。経済学部でしたけど、銀行に入って半年後には、銀行ではなくスポーツで仕事をしたいと思うようになってました(笑)。

-銀行ではどんな業務をされていたんですか?
主に、リテール営業です。富裕層を中心に、資産運用の相談や、投資信託や保険商品の販売をしてました。主なお客様は、ご年配だったので、実はものすごく人生勉強になったんですね。例えば、高級住宅街にお住まいで、何の不自由も心配もないように見えるのに相続や財産分与でずっと頭を悩ましている方がいる。一方で、そんなに資産がなくても、ご夫婦で充実した暮らしをされている方もいる。なかには、日本の高度経済成長を支えてきた若い頃の話をよく聞かせてくださる方もいて、仕事に情熱をもって取り組んできたことを誇りに思っているように聞こえたんですね。僕も、心から情熱を注げる仕事につきたいと思うようになり、銀行を退職することにしました。務めていたのは約2年ですね。

-そこからトレーナーの道へ進まれたというわけですね。
2005年3月に、上達屋の手塚さんのもとで、トレーナーになることを決意しました。大学時代、手塚さんの指導を受けていて、選手の関わり方に感動し、手塚さんの理論や考え方を誰よりも上手に伝えられるのは自分しかいない!と根拠のない自信だけはあったんですよ(笑)。最初の3カ月は見習いという形で日給2,000円からスタートして、大学生だった妹の部屋に住まわせてもらっていました。

>>後編へ
後編ではトレーナーとして指導する中で重要だと気付いた“パワーポジション”のこと、現役高校生、指導者の方へのメッセージなどをお届けする。


▼プロフィール

木村匡宏
1979年福島県出身。福島県立福島高校、慶応大学の硬式野球部でプレー。大学卒業後、約2年間の銀行勤務を経たのちにパフォーマンスコーディネーターの手塚一志さんが代表を務める上達屋でトレーナーとして活動。2016年3月からは岩隈久志さんがオーナーを務める「IWA ACADEMY」のチーフトレーナーとして子どもからトッププロ選手まで多くの競技者のサポートを行っている。


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