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【アメリカ視点で見る高校野球】100年目の節目を迎える大会の幕開け 開幕戦  鹿児島実業vs北海

2015.8.7
 記念すべき100年の節目を迎える大会ならではの受け継がれた伝統を重んじた開会式で幕を開けた。鳥羽高校の梅谷主将による選手宣誓。そして王貞治氏による始球式。

 開幕戦は 南北海道代表の北海高校対鹿児島代表の鹿児島実業高校というカードで幕を開けた。

 試合展開は序盤こそ、一点を争う攻防で鹿児島実業は連続スクイズを仕掛けるなど1点をきっちり取ろうとする場面が目立つ。だが一度崩れた北海は鹿児島実業の攻撃を止めることが出来なくなった。北海は早々先発投手の山本を62球、2回2/3で交代させ、地方大会で共にマウンドを分け合った渡辺が登板。だがその渡辺の調子が上がらず8失点を取られ、マウンドに上がったのは予選大会一度も登板のなかった大西。残念ながらアウトを1つも取れずに3点を許し、再び山本がマウンドに上がる。

 投手は登板を終えれば、アイシングをして肩を癒すことを多くアメリカの地で見ていたが、62球の登板から外野の守備に回り、再びマウンドに上がるというのはどれだけ負担がかかっているのだろうという懸念を持ってしまう。山本は結局、最後の4回1/3を投げきり合計134球を投げた。

 試合中にはアルプススタンド、そしてベンチ入り出来なかった部員の模様も度々映されていた。北海高校は部員数が総勢89人で多くの選手がアルプススタンドからの応援に回っていた。この猛暑の中行われている大会だけあって、選手枠を増やす、せめて投手枠を設けるということを考えれば各高校、投手の分担制を取り入れることができるのではないか。

 この試合では鹿児島実業の遊撃手の長谷部のファインプレーが光っていた。難しい球に対して流れの中で動きながら捕球してアウトを奪い、ダブルプレーも成立させた。日本人特有の正面に入って捕球をするのではなく、どちらかと言えばラテン系選手に見られる動きの中で流れるような裁きを見せていた。

 逆に日本人特有の守備は3回表ファーストゴロでライン際の難しいプレーで見られた。正面に入り、ボールを止めることを意識して、溢れてからも落ち着いた対応でファーストランナーをアウトにした。

 メジャーリーグやWBCなど世界の野球が今は身近に見られる存在になっているため、色んな野球のスタイルが体に染み付いているのは幅を広げることになるだろう。異なる肌の色に、様々な信仰が重なり合う米国社会では色んな文化や人種が融合されている。そのため色んなスタイルが混在する。日本では最近でこそ、外国の方が多くやってきているが甲子園の舞台にはまだまだ少ない。

 試合は結果的に一方的なものとなり、鹿児島実業が18対4と初戦を突破した。試合を終えた直後に次戦に向けて抽選をする勝者、そして甲子園の土を持ち帰る敗者は対照的なシーンである。米国で良く見る光景として、バスケットボール全米大学選手権を優勝したチームがゴールネットを切り持ち帰る模様は良く見るが、敗者が何かを持ち帰る光景というのは稀だ。これも文化の違いから生まれた伝統の1つなのか。


<著者プロフィール>
新川 諒(しんかわ りょう)
幼少時代を米国西海岸で10年過ごし、日本の中高を経て、大学から単身で渡米。オハイオ州クリーブランド付近にあるBaldwin-Wallace Universityでスポーツマネージメントを専攻。大学在学中からメジャーリーグ球団でのインターンを経験し、その後日本人選手通訳も担当。4球団で合計7年間、メジャーリーグの世界に身を置く。2015年は拠点を日本に移し、フリーランスで翻訳家、フリーライターとして活動中。


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