【八王子学園八王子】強敵に立ち向かうために「徹底力」を鍛える「ありんこ軍団」（前編）

2019.5.20

徹底力が「ありんこ軍団」最大の武器

今年のチームは東京都選抜に選ばれた武内寛斗投手（3年）や、昨夏4番を務めた高橋優介などタレントは例年以上に揃っている。個のポテンシャルで比較をすれば甲子園に出場した代より高いと安藤監督も認める。だが、試合では細かいミスが目立ち、勝てる試合を落としてしまうことも珍しくないという。

「個ではなく、組織として強大な敵に立ち向かうのが八王子のスタイルです。そのために必要なのはズバリ『徹底力』。『相手投手のスライダーに手を出してはいけない』と試合前に決めたら、例えホームランが打てる球でも見逃すことを私は求めます。それは公式戦だけではなく、練習試合でも同じです。甲子園に出場した代と比べるとまだまだその部分が足りていませんね」。

チームとしての約束事を徹底する力こそ八王子学園八王子が誇れる最大の武器だ。ただ、スライダーを振らない、インコースを我慢するためには意識だけではなく確かな技術も必要となる。安藤監督は練習中「こうしなさい！」と選手に押しつけることはない。まず、身振り手振りを交えて選手の現状を客観的に伝え、次に問題を改善するために必要なことを一緒になって考える作業をする。

「指導者が答えを言えば簡単に済むことも、選手自身が考えて解決しなければ技術は身につきません。自分がどういう風になりたいのか、そのためにどうすればいいのか。目的を持って練習をするのは選手自身です。私の役割は問題を解決できる環境を整え、サポートすることですから」。

基礎はしっかり教える。しかし、その先の技術や応用は失敗することで理解することが野球には多いと安藤監督は言う。遠回りかもしれないが、時には見守ることや会話をすることで選手の自主性は養われると安藤監督は他競技から教えられた。

今の最高学年の選手たちの中には、中学3年生のときに八王子学園八王子が甲子園に出場した瞬間を間近で観ていたという選手も多い。部に歴史を作った先輩たちに憧れ、このグラウンドに立っている。例え個人では勝てなくても束になれば強敵に勝てる。偉大な先輩たちが証明した伝統を受け継ぎ、今日もナインは汗を流す。

後編は八王子学園八王子の練習や、普段の取り組みについてレポートします。

（取材・写真：細川良介）