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【選抜優勝投手の系譜】常葉菊川高校・田中健二朗投手  ~後編~

2016.3.31
 選抜初戦で元・日本人最速投手である佐藤由規(現・東京ヤクルト)との投げ合いに勝った田中投手。しかし、後にプロで対戦する同期との熾烈な戦いが待ちうける。ビハインドをフルスイングで返す味方打線の援護射撃もあり、選抜優勝は目の前に迫った。


◆後にプロ野球選手となる同期との対決

 2回戦へとコマを進めた常葉菊川。次なる相手は同じく後にプロ野球選手となる同い年、熊代聖人擁する今治西。投打で非凡な才能を見せる熊代選手を田中投手がうまく抑え、常葉菊川が誇る「フルスイング野球」がビッグイニングをもぎとる。結果は10-0という大差で常葉菊川が難敵を退けた。

 準々決勝の相手は佐藤投手に続きビッグ3の一角、中田翔選手擁する大阪桐蔭。今大会一番の注目選手といわれ、世代一のスラッガーとして名を馳せた中田選手。制球に自信のある田中投手は、強力打線を徹底した内角攻めで攻略。初戦と同じく2-1の1点差ゲームをモノにする。


◆逆転のフルスイング打線で、悲願の選抜優勝

 準決勝の相手は後にプロで盗塁王に輝く藤村大介が引っ張る熊本工。試合は藤村選手の2本の三塁打などで、田中投手をマウンドから引きずり下ろす。だが、ここで常葉菊川自慢の二枚看板の威力発揮。二番手戸狩投手の好投が光り、終盤9回表のリズムを生む。一点ビハインドをフルスイングで逆転し、6-5の接戦を制する。

 決勝の相手は同じ東海勢の大垣日大。田中投手の疲労を考慮し、前の試合に好投をした戸狩投手が先発のマウンドに立つ。試合は乱打戦となる。

 先制されるも、積極的なフルスイングで一歩もひかない常葉菊川打線。3回から戸狩投手からマウンドを引き継ぎ、エース田中投手の登場。試合は8回表まで大垣日大が1点リードの展開。

 8回裏の常葉菊川は2者連続で3球三振。自分たちの野球を貫き通す。ツーアウトからヒットが続き、2点を奪取。ついに試合をひっくり返す。最終回となる9回を、田中投手が最後の力を振り絞り抑え、歓喜の瞬間が訪れた。

 森下監督は史上13人目の選手・監督両方での優勝経験者となった。田中投手はこの年のドラフトで、ビッグ3と同じくドラフト1位で横浜ベイスターズ(現・横浜DeNAベイスターズ)に入団。昨シーズンはオールスターにも出場する活躍をみせた。

 将来性豊かな同級生に勝ち抜いた選抜。田中投手の好投は選抜の歴史に刻まれている。そして、プロとして新たな歴史を刻むべく、今日もマウンドに立ち続ける。


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