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【浦和学院】若き指揮官がもたらした変革、伝統校に加わった「新たな色」

2022.7.18

甲子園22回出場、センバツ優勝1回。そんな偉大な実績を持つ前監督の父・森士(おさむ)氏から昨夏にバトンを受け継いだ森大(だい)監督。甲子園初采配となったセンバツ大会ではベスト4進出。前任者の遺産を引き継ぎつつも、スタイルや采配は自分のスタイルを貫くY世代監督。新しく生まれ変わった浦和学院の話が聞きたくて、グラウンドに森監督を尋ねました。


「浦和学院」のイメージをひっくり返す大変革

「大内、お前の守備がうまいことは誰もが知っているんだから、消極的なプレーはしないようにしようよ。大内、オーケー?」

スピーカーから森大監督の声が響き渡る。埼玉・浦和学院の野球部グラウンドでは、シートノックが行なわれていた。セカンドを守る大内碧真のプレーに迷いを感じ取った森監督はプレーを止め、マイクを通して大内を激励した。大内は大きな声で「はい!」と返し、ノックは再開された。

これまで抱いていた「浦和学院」のイメージが180度ひっくり返った思いがした。

練習後、ドラフト候補に挙がる正捕手の高山維月にそんな感想を伝えると、こんな答えが返ってきた。
 
「チームが一気に変わった感じはあります。森(士)先生の頃は朝練から大きな声を出して、動きを揃えて『軍隊みたい』と言われていたみたいですからね」



かつて5時半に起床して行なっていた早朝練習も、今は廃止された。就寝時間は以前までの23時から、今は21時〜21時半に。高山は「寝る時間が長くなって疲れがとれるようになりました」と、その効果を語る。

昨秋から今春にかけてチーム内の平均身長が1.5センチ伸びたという。高山に至っては身長178センチ、体重65キロの細身の体が身長180センチ、体重71キロと一回り大きくなった。

禁じられていたスマートフォンも解禁され、選手は自分に足りないものを埋めるべく情報収集に精を出す(ただしSNSでの発信は禁止)。まるで江戸時代のペリー来航のような大きな変革が起きている。

これらの改革が、低迷したチームで起きるならわかる。だが、浦和学院は甲子園優勝監督の退任直後、しかも後継者となった息子によってスタイルが一新されている。



前監督の手法を踏襲しておけば、批判は免れるはずだ。それなのに森大監督は森士前監督のスタイルからガラリと変え、センバツベスト4という結果を残した。なぜ変革できたのか尋ねると、31歳の若き指揮官は少し考えてからこう答えた。

「現役の頃から浦学を知っていて、森士と同じ野球は到底できないと思いました。指導力、戦い方、人を惹きつけるカリスマ性。すべてひっくるめて自分にはできないと悟ったんです」



前任者である父のスタイルを否定し、改革したわけではない。森監督はその点を強調した上で、こう続けた。

「監督・森士の原点は何かと言えば、選手への愛情の深さだと思うんです。常に全力で厳しいのは、すべて選手のためを思ってのこと。それは歴代の名監督にも通じる部分だと感じます。1分1秒を生徒と向き合い、寄り添う愛情は引き継ぎながら、スタイルや采配は自分のスタイルを貫いたほうがいいと考えたんです」


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