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「高校野球監督がここまで明かす!投球技術の極意」清水央彦監督|県立大崎

2021.10.18

打撃技術の向上により140キロを超えるボールでも打ち返されるようになった近年の高校野球。そこでより大事になるのがピッチャーの育成ですよね。
今回から数回にわたりスポーツライター大利実氏の書籍「○○技術の極意」シリーズから『高校野球監督がここまで明かす!投球技術の極意』の一部分を紹介します。初回に登場するのは長崎県立大崎高校を2021年センバツ初出場へ導いた清水央彦監督。どんなピッチャー育成を行っているのでしょうか?


まずは投げる腕から 下半身の指導は最後に


清水央彦監督に初めて会ったのは、2007年頃だったと記憶している。神奈川・川崎北高を率いていた佐相眞澄監督(現・県相模原高)のもとに、バッティング指導を教わりに来ていた。すでに、清峰の部長として春夏4度の甲子園を経験したあとであり、投手育成に長けた指導者であることはよく知っていた。どこかでお話を聞きたいと思っていたところ、偶然にも、神奈川の地で会うことができた。

──ピッチャーはどんなところから教えるのですか?

たしか、こんな質問をした覚えがある。それに対する、清水監督の考えに驚かされた。
「私は、投げる腕から教えます。ほとんどの指導者が、『腕はいじらない』『下半身から教える』と考えていると思いますが、下半身を教えるのは最後です」

その後も多くの指導者から、投手育成法について聞いてきたが、「投球腕から教える」と自信を持って答えたのは清水監督だけである。

なぜ、投球腕から入るのか。なぜ、下半身の指導は最後なのか。

もっとじっくりと話を聞きたいと思ったまま、10年以上の歳月が過ぎてしまった。その間清水監督は佐世保実を夏の甲子園に2度導き、この春には県立大崎高を初の甲子園出場に導いた。甲子園に行くときには必ずと言っていいほど好投手がいて、現在の大崎高には安定感が光る右の坂本安司と、将来性豊かな長身左腕・勝本晴彦を筆頭に、楽しみなピッチャーが複数いる。

羽田空港から飛行機でおよそ2時間、さらに長崎空港からレンタカーで1時間半。目的の場所である西海市の大島総合運動公園のグラウンドに着くと、「こんな遠くまでわざわざありがとうございます」と、清水監督が笑顔で迎えてくれた。この野球場は、大崎高校の実質的なホームグラウンドであり、平日も土日も優先的に使用できるようになっている。

早速、聞いてみたかった。投球腕から教える理由はどこにあるのでしょうか──?
「利き腕なので、誰もが優れた感覚を持っています。感覚があるからこそ、直しやすい。それが一番の理由ですね」

何とシンプルな答え。

では、軸足から指導しない理由とは?
「軸足で立って、体重移動を起こして……という動きもたしかに大事ですが、まだ下半身の力がないうちにそこをやってしまうと、スピードが全然上がってこないんです。軸足できれいに立ったとしても、体重移動のスピードにつながっていかない。上半身の動きができて、トレーニングによって下半身が強くなってから、下の使い方を教えるようにしています。これまでの経験上、下の動きは形だけ作っても、良くなっていきません」

高校野球は実質2年半。清水監督の中には、投手育成のおおまかなプランがある。
「教える順番は、右ピッチャーでたとえるのなら、右腕、左腕、左足、右足で、最後にもう一度、右腕に戻ってきます。優先順位は上から下。上半身については1年秋ぐらいまでに改善して、それと並行して、下半身はトレーニングでみっちりと鍛えていく。1年生の冬頃には、ステップする左足の改善に入り、それができてから軸足に入る。だいたいこの順番を踏むようにしています」
 指導の順番が、ここまで明快な指導者もなかなかいないだろう。順を追って、それぞれのポイントを紹介していきたい。


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