カラダづくり

武田翔太投手が実践中!「しくじらない」コンディショニング術(Part3)

2019.11.20

好評企画の第3弾は「オフの過ごし方」についてです。武田投手は「プロ野球選手にオフはない!」と言い切りますが、高校生にとって公式戦のない11〜2月の間は身体づくりを強化し、トレーニング法を見直す絶好のチャンス。秋に進化して、ライバルに差をつけよう!


正しく行いたい! オフシーズンのトレーニング&筋力UP

秋は1年で最もトレーニングする季節。プロは「来季への準備期間」

新チームが始まり、3カ月以上が経ちましたが、皆さんのチームの調子はどうでしょうか? 今年の夏も暑かったですから、疲労をそのまま残して秋の大会に臨んだ選手も多かったのではないでしょうか。

僕も夏は皆さんと同じように、太陽の下で練習を行っていました。1軍からファームに落ちて、タマホームスタジアム筑後(2軍の球場)で、もう一度コンディショニングに取り組んでいたのです。

プロに入って8年目になりますが、1年を通しての体調や、筋力は毎年違っていて、毎年予想ができません。今シーズンは先発ローテーションからのスタートでしたが、5月に中継ぎになり、7月にファームへ。ケガをしたわけではないのに、調子が上がらない時期がありました。1軍で毎日投げていくうちにお尻の筋肉が固まって、下半身に粘りがなくなっていたのです。そこで、ファームの練習場で、可動域を広げるストレッチとトレーニングをしました。先発と中継ぎ。役割によっても身体の負担や疲れは違います。日々自分の身体に問いかけをしながら、コンディショニングを行っている状況です。

3日休んだらゼロに戻る! そのくらいの気持ちで毎日コツコツ

僕が秋のトレーニングで意識していること、皆さんへのアドバイスを3つ挙げてみました(下記)。ウエイトトレーニングは同じ部位を毎日やらないように気をつけながら、柔軟性を意識して行っています。野球選手は固い筋肉をつけてもしょうがないので、肩甲骨、股関節は可動域を広げることに主眼を置いています。それと並行し、ストレッチと体幹は毎日やっています。ランニング系のトレーニングは、ジョギングのほかに、短いダッシュを取り入れることが多いですが、そのときに「太モモの裏」を意識して走るとハムストリングスが鍛えられて良いと思いますよ。

ストレッチや柔軟を毎日やってきたからなのか、僕は腰痛になったことが一度もないんです。身体の柔らかさは普通なんですが、このことはちょっと自慢です。腰痛の原因は様々ですが、身体が硬い選手はこの秋、柔軟性アップにチャレンジしてみるのもいいかもしれません。

プロ野球選手にはオフはありません。僕も全く身体を動かさない日は1年間で年末の数日くらい。3日休んだらそれまでのトレーニングがゼロになってしまうと思っているので、「休みすぎないこと」も向上のコツだと思っています。

長いシーズンが終わると、プロ野球選手は休む間もなくそのまま秋季キャンプに入ります。キャンプは年に2回ありますが、秋はトレーニングがメイン、春(2月)は技術・実践練習がメインとなり、それぞれ目的や課題が異なります。この号が出るころ(11月下旬)はトレーニングメインで身体をもう一度作っている時期でしょうか。シーズン中は試合が週6日ありますし、ケガも怖いので追い込んだトレーニングはあまりできません。なので、この秋のキャンプが身体づくりの唯一のチャンスなんです。高校生の皆さんも「来年に向けての準備」に切り替えて、秋と冬の間にライバルに差をつけて欲しいですね。


自分の身体を知り、自分に合ったトレーニングを見つけよう!

トレーニングで1番大事なことは「自分の身体を知ること」です。自分の弱い部位、強い部位を知って強化する。それに尽きると思います。それから気をつけて欲しいのが、プロ野球のキャンプメニューをそのまま高校生が真似しても結果に結びつくとは限りません。なぜなら、高校生は毎日練習をしているし、身体もまだ成長過程だからです。僕も子どものときに西武の南郷キャンプを父親と見に行きましたが「すごい」と感心するだけで、同じメニューをしようとは思いませんでした。自分の身体を知り、自分に合ったトレーニングを見つける。秋冬はたっぷり時間もあるので、試行錯誤をしながら自分自身を探る期間にしてくださいね。


ソフトバンク春季キャンプの練習メニュー一例(2019年)。どの選手がどこでどんな練習をするかを貼りだしファンに公開している。

効率よく成果を出すための、オフ期トレーニング3種類


【1】ウエイトトレーニングは柔軟性を意識
野球選手はボディビルダーのような筋肉をつけても意味はありません。特に大切なのは、柔軟性を意識して筋トレを行うことです。ベンチプレスをするときも、肩甲骨をよく動かして可動域を広くして行ってください。

【2】身体の軸、最も大切な「体幹」を作る
強い筋肉を支えるために欠かせないのが体幹です。プランクなど、自分の体重を使ったものから、バランスボールなどの器具を使ったものまで、種類は無数にあります。ウエイトトレーニングと違って、毎日行っても大丈夫ですよ。

【3】ラン系トレーニングは、走り方を意識して
プロ野球選手も秋はめちゃくちゃ走ります。走るときに気をつけているのは、太モモ裏のあたり、ハムストリングスを意識して走ること。「後ろの筋肉」がつくと、強くて瞬発性のあるパフォーマンスが身に付きますよ。


武田翔太(福岡ソフトバンクホークス)
1993年4月3日生まれ。宮崎県出身。186㎝、89㎏。右投右打。軟式・住吉中時代に最速142キロでKボール宮崎選抜に選出。宮崎日大では1年からエースで活躍。11年ドラフト1位でソフトバンク入団。背番号18。

取材・文=樫本ゆき 写真=廣瀬 久哉

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