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【帝京】名将・前田三夫監督が語るキャッチャー育成論

2017.5.29
帝京を高校を三度の全国制覇に導いた帝京高校野球部の前田三夫監督
帝京を高校を三度の全国制覇に導いた帝京高校野球部・前田三夫監督

春夏合わせて3度の甲子園優勝を誇り、『東の横綱』と呼ばれる帝京高校。高校野球でいち早く食事の強化を取り入れ、本格派投手や大型選手で圧倒する野球で知られるが、それだけでなく機動力や高い守備力が魅力の選手も多く輩出している。そんな帝京高校の5月下旬の練習を取材した。


甲子園春夏優勝三度、準優勝二度の圧倒的な実績を伝えるレリーフ
甲子園春夏優勝三度、準優勝二度の圧倒的な実績

現在まで26人ものプロ野球選手を輩出している帝京高校。あらゆるタイプの選手が揃っているが、近年目立つのが捕手の充実ぶりだ。過去10年で原口文仁(阪神)石川亮、郡拓也(ともに日本ハム)と3人の捕手が高校から直接プロ入りしており、これは大阪桐蔭、九州国際大付と並んで全国1位の数字である。そこでまずは前田三夫監督に上記の三人を例にとりながら良いキャッチャーの条件、重視するポイントなどをうかがった。

校舎に併設された立派な専用グラウンド
校舎に併設された立派な専用グラウンド

「誰をキャッチャーにしようかと考えた時に、まずチームの中で積極性がある子を選ぶようにしています。他の選手によく話しかける、こちらが言わなくても自分で指示が出せる、協調性がある、そういう子が適していると思いますね

キャッチャーでよく思うのは単なる壁になっている選手が多い。とにかくピッチャーのボールをしっかり受ける、ただそれだけの意識が強いんですね。僕はそういう選手はキャッチャーに選びません。ピッチャーのボールに対してしっかり反応できること。いいボールは『ナイスボール!』って声をかけたりできる。そういうキャッチャーがピッチャーにとっても投げやすいと思います。積極性という意味で一番印象に残っているのは石川ですね。入学してきた春にベンチに入れたんですが、僕のすぐ隣に来るんですよ。他の選手は嫌がってなかなか来ません(笑)。それで受けているピッチャーの状態を報告してくるんですね。当時の三年生に伊藤拓郎(元DeNA)という力のあるピッチャーがいたんですが、彼に合うキャッチャーがなかなかいなくて困っていたこともあって、一年生を使うのは勇気がいりましたが思い切って試合でも使ってみることにしました。

桐生第一との練習試合で今でも覚えているんですが、彼が試合に出たことでチームの雰囲気がガラッと変わったんですよ。ベンチから見ていて凄く締まって見えた。相当な決意で冒険しましたがあの試合を見てこいつしかいないと思いましたね。結局その年の夏も甲子園に出ましたし、キャッチャー一人でこうもチームが変わるのかというのを感じましたね。それだけ重要なポジションだと思います」

グランドで精力的に選手を指導する前田三夫監督
グランドで精力的に選手を指導する前田三夫監督

ちなみに一年生の春から正捕手を任せたのは石川選手が初めてだったという。入部当時から物怖じせずに監督の隣で状況報告ができるくらいの積極性を持った選手はなかなかいないだろう。一方の原口選手、郡選手は意外なことに入学当時は違うポジションを守っており、途中から捕手のコンバートしたそうだ。

「原口は外野手として入学してきましたが、外野としてはあまり上手くなかった。それで内野もやらせましたがそれもあまり上手くない。ただ普段の練習を見ていると非常に冷静なんですね。人の話もしっかりと聞いている。それでこの年もキャッチャーが固定できなかったので原口に『キャッチャーやったことあるか?』って聞いたら小学校三年生まではやっていたと言うんですね。それなら一回やってみようかということで二年生の時にコンバートしました。そうしたらピッチャーが良くなってきたんです

三年生の時には高校日本代表にも選ばれてアメリカとの親善試合にも出ましたが、その時に宿舎でも選ばれたピッチャー全員と話をして、持ち球から何から全てチェックしたと聞きました。それだけよく考えて研究熱心なところがあったから、うちのピッチャーも伸びたんだと思います

郡も入ってきてからずっと内野手でした。郡の良いところはとにかく勝ちたいという気持ちが強かったところ。お兄ちゃんもうちにいて、その時は決勝で負けたこともあったと思います。気持ちが前面によく出ていました。それでプレーを見ていると肩は強い。聞いたら小学校四年生まではキャッチャーだったというから二年の秋にやらせてみたらピッチャーに当たるような高さで凄いボールを投げる。これならできるなと思って正捕手に決めました」

かつて育てたキャッチャーたちのことを懐かしそうに話してくださった前田三夫監督
かつて育てたキャッチャーたちのことを懐かしそうに話してくださった前田三夫監督

原口選手、郡選手とも経験はあったとはいえ高校でキャッチャー転向するのはかなりの戸惑いもあったのではないだろうか?また技術的な面でキャッチャーに必要な要素はどこにあるのか?そのあたりについても聞いた。

「途中からキャッチャーをやることに当然戸惑いはあると思います。ただキャッチャーって面白いんだということを覚えさせると上達は早いです。まず自分でチームを動かすことができる。指示もできる。そういうやりがいがあるという話はしますね。原口も郡もブランクがあったので上手くいかないこともありましたが、それで叱ってばかりではやる気も出ない。配球やリード面は最初は僕からサインを出して、それで覚えていった感じですね。あと他のポジションを経験していると、その選手達のことが分かっている。だから指示も出しやすいんですね。そういうプラスの面もあったと思います。技術的にはやっぱり肩の強さは必要だと思います。キャッチングやリードはやっているうちに覚えてきますよ

キャッチャーについて語る前田監督の口からは「積極性」という言葉が何度も出てくることが印象的だった。監督が指示をする前に指示ができる、声が出せる、そして技術的には肩の強さがあるという選手がキャッチャーとしての素養が高いと言えるだろう。


後編では今年のチームで正捕手を務める田中麟太郎選手の話、そして練習についてレポートします。

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