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【県立相模原】佐相眞澄監督の打撃理論と打撃練習(後篇)

2017.5.19
マンツーマンで選手に軸足の使い方を指導する佐相眞澄監督。
マンツーマンで選手に軸足の使い方を指導する佐相眞澄監督。相模原高校のグラウンドでは当たり前に見られる光景

激戦区神奈川で『打ち勝つ野球』を目指して日々バッティング強化に取り組んでいる神奈川県立相模原高校。前編では佐相眞澄監督に打ち方を知らない選手に対する指導、練習法をうかがったが、後編ではタイミングの取り方、投球への対応、実際のバッティング練習についてレポートする。


長年の公立中学、県立高校での指導経験からバッティング理論を確立させた佐相監督。スイングの軌道を矯正し、正しいトップの形を作り、強い打球を打つことまでは前編でポイントを教えていただいた。そして次に重要になってくるのはタイミングの取り方だ。

「まずは軸足に体重を乗せて股関節に“はまり込む”時間をしっかりとってやるところからスタートです。そこから前の足(右打者なら左足)を引いたり上げたりしてからステップしていきますが、その踏み出す動きとバットを引く動きを同調させます。その次に前の足が着地しますが、その時には手はまだ後ろに残っていないといけません。そうしないと体もバットも早く前に出てしまいます。前の足が着地した後に軸足の膝と骨盤を回して肘を出していきますが、利き手側の肘(右打者なら右肘)がヘソの前を通過する時が前の肩(右打者なら左肩)が開く時になります。このタイミングが早すぎるとバットが体の近くから出てきませんし、外の変化球に対応することができません」

そしてもう一つ重要になるのが『下の間(ま)』だとのことだった。

「ステップする時に前の足は必ず踵を浮かせた状態ではないといけません。そうでないと間(ま)を作ることができません。まずはつま先でついた状態でしっかりバットを後ろに残しておいて、かかとをついたタイミングでスイングする。そうすることで下(下半身)で『間』が作れるようになります。あとはさっきも話した肩を開くタイミングで上(上半身)の『間』を作る。下の『間』と上の『間』の二つで対応するということですね」

タイミングをとるための動きについて佐相監督自らバットを持ってスイングの形を身振り手振りで示していただいたが、ポイントがよく整理されていて非常に分かりやすいものだった。

相模原高校に野球部専用のグラウンドはなく、現在改修工事を行っていることもあってこの日の練習は近隣の横山公園の野球場で実戦練習を行った後、グラウンドのバックネット方向に打つバッティング練習が行われた。打席は四ヶ所。両サイドは打撃投手が投げ、真ん中の二つは速いストレートと緩い変化球に設定されていた。特徴的なのは打撃投手が使っていた移動式のマウンドだ。

保護者の協力によって手作りされたもので分解して持ち運ぶことができ、バッティング練習でも実戦に近づけるためには欠かせないものだという。

芯でとらえる感覚を養う目的でバッティング練習で使用するのは木製バットだ。ただ経済的なことを考えて、打撃面以外は別の素材が使われており折れにくいものになっている。そしてバッティング練習の時に佐相監督がこだわっていたのがヒットゾーンへ打球を飛ばすということだ。

「いくらいい当たりを打っても正面でアウトだったら意味がないんですよね。だから練習でも試合でもどこに打ったらヒットになるかを考えて打つように選手には言っています。私立の強いチームの選手は崩されていい当たりじゃなくても間を抜けてヒットを打つことができるんですよ。それができると打線が繋がるようになりますから」

実際のバッティング練習の後ろではトスされたボールを打つティーバッティングも行われていたが、ここで使っているネットも特注のものだ。

ネットを二つ並べると間にスペースができ、トスする選手はその間からボールを投げる。そして打者から見ると左右両方にボールが収まるネットがあるという状態になるのだ。バッターはトスされたボールを左右それぞれに打ち分けることが可能になる。この練習も狙った方向にしっかり打ち分ける技術を身につけるのに役立ち、実戦でヒットゾーンを狙うことにも繋がるのだという。

選手のスイングをスマホで撮影するマネージャー
選手が自分でスイングを確認できるようにスマホで撮影するマネージャー

バッティング練習中に佐相監督が選手に声をかけることも多々あったが、それ以上に多かったのが選手が自ら監督の前に来てアドバイスを求める姿だった。「軸足と骨盤の使い方についてお願いします!」などと見てもらいたいポイントを監督に伝え、それに対してアドバイスをする。選手が主体性を持ってバッティング技術の向上に取り組んでいることがよく分かる光景だった。

佐相監督も「県相(けんそう)の子達はこっちがとやかく言わなくても自分たちでやる子が多いです」と話すように、バッティング練習以外でも選手だけであらゆるメニューを消化していた。相模原高校の躍進の影には確立された技術指導とそれに主体的に取り組む選手の両輪が作用していると言えるだろう。

夏の神奈川県大会は7月8日。相模原の強力打線が今年も台風の目になることは間違いない。(取材・撮影:西尾典文)

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