企画

【野球の観方を変える】3得点以上奪うためのチーム作りとは?

2014.10.11
「縦振り理論」をベースに、少年野球から高校野球まで幅広くチームサポート活動を行う榊原貴之が、野球の新たな観方を提案する。


バッティングのカギは「積極性」と「長打力」

 昔に比べて明らかに投手の球速が上がり、球種も増えている現代の高校野球。バッターとしてはいろいろな投手のタイプに対応していかなければなりません。私は常々「3得点以上奪えるチーム作り」を提唱しています。では、どうすればいいのか?バッティングに焦点を当てると、二つのキーワードが鍵になります。それは『積極性』と『長打力』です。

 一つ目の『積極性』。「ファーストストライクから打て」「初球から振っていけ」と現場ではよく言われます。でも、この理由の意味をどれだけの人が理解して使っているでしょうか。なぜこうしなければいけないのか。理由は投手目線と打者目線の二つの視点から考えてみましょう。

 まずは投手目線から。投手が一番欲しいものはストライクです。ボール球が先行すると四球が頭にチラつきます。どんなに良い投手でも少なくとも2球目までで1ストライクは絶対欲しいと思っています。ということは、必ずカウントを作りにくるのです。良い投手になれば、必ずウィニングショットを持っています。そうでなくても2ストライクになれば、余裕がありますから三振を獲りに来ます。追い込まれた状態の難しい球を打つよりは、ストライクを取りに来ている球を打つ方が断然に確率が高いです。実際にプロの3割打者でさえも、2ストライクに追い込まれてからの打率は2割台前半と言われます。逆に初球やボール先行のカウントでは3割を大きく超える打率になります。そのことからも、バッターの積極性は重要なポイントになるでしょう。

 次に打者目線で考えてみましょう。打てない打者ほど、失敗を恐れる傾向にあります。一試合四打席で全て結果を出そうと考え、結局どれも凡退、という結果も多いです。本当は一打席目なんかバッターボックスで素振りをさせてもらうくらいの軽い気持ちでいいんです。動かずにジッとしていることでカウントもメンタルもどんどん追い込まれていきます。初球を空振りやファールしたりすることで体も徐々に動くようになりますし、球筋もよくみえるようになってきます。そうしたことが後々の打席にも活きてくるわけです。チームとしても極端に言えば1イニングを3球で終わってもいいくらいの気持ちで臨んでみましょう。


一試合で長打を2本打てるチームにすることを目標に

 さて、次のキーワードは『長打力』です。良い投手から10本も20本もヒットを打つことはできません。そうなると少ないチャンスをモノにするには「長打」が必要になってきます。ここ3年間の夏の甲子園一回戦でのこんなデータもあります。一試合で長打を2本以上打っているチームの勝率は7割を超しています。それくらい勝敗に大きく関わってきます。特に走者を置いた時の長打は言うまでもなく貴重ですね。二死一塁でも長打が出れば、1点入ります。もしホームランなら2点ですからね。あと1アウトを獲ればというところですから、相手に対する精神的打撃も大きくなります。「うわぁ」という地響きのような球場のどよめきがさらに空気を助長させますよね。そして、長打に関して主軸打者はもちろんですが、下位打者でもその可能性を秘めておきたいです。公式戦ではバットもボールも新しいものを使用します。ツボに入れば外野手の間を抜いたり、ライン際へ鋭い打球を打てるようにしておきたいですね。夏の甲子園では下位打者がホームランなんてことは珍しいことではないですから。

 「3得点以上奪う」という試合運びを想定し、『積極性』と『長打力』を磨いていく。そうすると、単なる技術に留まらず、どのようにチームとして戦っていくかをより具体的に考えていくことになるでしょう。次回はこんな攻撃をしてくるチームにはどのように対処していくかというケースを「ピッチング」の面から考えてみたいと思います。



<著者プロフィール>

榊原貴之(さかきばらたかゆき)
昭和49年生まれ、神奈川県出身。”縦振り”という考え方を基に走攻守の技術を始めとして、チーム創りに関するアドバイスを全国の野球チームに行う。小中学生を対象とした野球教室や指導者講習会などの講師も担当。Facebook、Twitterにて野球観や人生観の“気づき”を毎日綴っています。

Twitter : @taka19740921
Facebook: facebook.com/takayuki.sakakibara


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