「修徳を変えよう」という思いはない
2021年7月には新グラウンドが完成し、今年3月には全面人工芝にリニューアル。今年は身長192センチのドラフト候補右腕・篠崎国忠を擁して、10年ぶりの夏の甲子園出場を狙っている。
4番・一塁手として存在感を放つ逢坂ら2年生のレギュラーメンバーが多く、若さゆえの爆発力が期待できるのではないか。そう尋ねると、荒井監督は「若さによる爆発力は一過性のものですし、求めていません」と答えたうえでこう続けた。
「逢坂を筆頭にAチームにいる2年生の取り組みは現時点で申し分ありません。私はむしろ、3年生がこれまで積み上げてきた爆発力に期待しています」
逢坂は仲間たちに「俺らも3年生と一緒に引退するくらいのつもりでやる」と悲壮な覚悟を語っているという。あとは3年生が温めてきた勝利への執念が、目に見える形で表に出てくれば……。荒井監督はそんな期待を抱いている。
今年も東東京大会は、強大なライバルがそびえている。お互いに順調に勝ち抜けば準々決勝で対戦することになる帝京、何度も甲子園への夢を砕かれてきた試合巧者の関東一、今夏はノーシードながら充実した戦力を誇る二松学舎大付。荒井監督は強敵への警戒心を滲ませつつも、修徳の選手に対して「あいつらもようやってるんで……」と言葉を詰まらせた。
そして、荒井監督はふと何かに気づいたようにこう言葉を紡いだ。
「僕自身、『修徳の子の悪いところを直そう』という思いはあまりないんです。むしろ、いいところをさらに伸ばしてやりたいという思いだけですね。だから、僕自身が成長しないといけない。野球というスポーツの本質や深いところを学び直して、生徒たちを勝たせないといけないと思ってやってきました。だから『修徳を変えよう』という思いがないんでしょうね」
機は熟した。勝利への執念が骨の髄まで沁み込んだ修徳の選手たちは、今夏の東東京を熱くするはずだ。(取材・文・写真:菊地高弘)
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