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【明豊】川崎絢平監督|情に流されて勝てるほど甘くなかった甲子園

2023.11.6

代え時の“基準”を明確化すべし



――継投に対する考え方がもっともハマった大会は、やはり準優勝した2021年のセンバツということになりますか?


そうです。センバツ準優勝の時は“このピッチャーの、このボールが増えてきたら代え時だ”という明確な基準がありました。京本眞(巨人)、財原光優(同志社大)、太田虎次朗(東洋大)という3人のピッチャーの特徴をこちらで完全に把握できていたので、代え時の基準になる予兆を充分に理解しながら、先手先手の継投を打つことができたのです。

――継投が失敗する時の傾向もあるのですか?

試合中に“このイニングまで投げ切ってくれたら、次の回に打順が回ってくるので代打を出せる”と考えていると、良い結果には結びつかないことが多いですね。公式戦でこれをやったために痛い目にあったことは、何度もあります。
“この回までだからMAXで行くぞ!”と考えてしまうと、ちょっと変になってくるピッチャーも少なくありません。とくにバランスで投げるタイプは、通常のリズムに力感を加えることでおかしなことも珍しくはないのです。もちろん、その逆でMAXのピッチングができるタイプもいますけどね。



――今夏の甲子園、北海戦では継投に川崎監督の“情”のようなものを感じました。

3年生の森山塁から2年生の野田皇志への代え時が難しく、“情と決断(代え時)”を天秤にかけながら、いろんなことを考えましたね。森山は2点をリードしている7回途中から2番手でマウンドに上げましたが、その時点で本調子ではなく“あまり良くないな。終盤(試合が)ゴタゴタするかもしれんな”と思っていたら、やはり9回二死から押し出しなどもあって同点に追いつかれてしまいました。
でも、1年夏から甲子園で投げるなど、チームの誰より経験が豊富なピッチャーが森山でした。それなのに、最後の夏に背番号1を与えることができなかった。“あれだけ森山に頼り続けてきたのに、最後の最後で頼らないのかよ!”という思いも、私の中にはあったのです。だから、最後は“森山でダメなら仕方がない”と腹を括りました。
今まで森山が歩んできた過程、練習態度、生活態度、マウンド経験……。それらすべてを含めて、ああいう継投の判断になったのです。情と決断を天秤にかければ、人間なので情が勝つこともあります。ただ、情を取り過ぎている時は負けている印象も強いです。もちろん、森山の場合は情だけではなく、充分な実績や、歩んできた道のりを評価しての続投判断でした。でも、やっぱり継投は難しいですね。(取材:加来慶祐/写真:編集部)


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