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【アメリカで開催される「もう一つの高校野球」】エリアコード・ゲームズに集まったエリート高校球児の素顔

2015.8.14
 甲子園で高校野球が始まったいま、米国では異質の高校野球が行われている。エリアコード・ゲームズ(特別協賛:ニューバランス社)がそれだ。全米から選ばれた約250人の高校球児がメジャーリーグや大学のスカウトの前で実戦を行い、自身の実力を披露する高校野球である。

試合終了後に両チームの健闘をたたえ、ハイタッチを交わす球児たち

 舞台はカリフォルニア州立大ロングビーチ校の球場「ブレア・フィールド」。かつてアスレチックスやヤンキースで活躍したジェイソン・ジアンビや、今をときめくブルージェイズのトロイ・トゥロウィツキー、レイズのエバン・ロンゴリアら多くのメジャーリーガーたちが学生時代に腕を磨いた場所だ。カリフォルニアの青空の下、気温30度弱で、ときおり心地よい風が吹くなかで行われている。

 エリアコード・ゲームズでは集まった球児が8チームに分かれて実戦をするのだが、日本ではちょっとお目にかかれないイベントが行われていた。高校球児によるホームラン・ダービーである。6日の夜からの模様はスポーツ専門ケーブルテレビ局ESPNでも中継された。8チームからそれぞれ一人の代表が出場する勝ち抜き戦形式だった。チームメートは打席のすぐそばで大声を張り上げて応援する、にぎやかな雰囲気。まるでメジャーのオールスター戦前日のホームラン・ダービーのようであった。

ホームランダービーでは場外に乱発し優勝したグスマン内野手。数学が好きだと語っていた。
 優勝したのはフロリダ州セントブリーダン高校のマックス・グスマン選手。ドミニカ共和国系で183㌢、97㌔の巨漢一塁手だ。「優勝はうれしかった。僕の持ち味はパワーだから」と喜んだ。米国でも高校生の大会は金属バットだが、エリアコード・ゲームズではメジャーを意識して木製バットが使われる。グスマン選手は将来を見据えて普段から木製バットを使っているので、違和感はなかったという。メジャーリーガーになって母に孝行したいというハングリーな18歳だ。




応援にきた元メジャーリーガーの父とツーショットのビシェット内野手。日本の高校球児とも、いつか対戦したいと語っていた。
 今回、グスマンと同じチームでプレーするフロリダ州レークランド高校の二塁手兼遊撃手、ボー・ビシェット選手は対照的に元メジャーリーガーの父を持つサラブレッドだ。父はロッキーズなどで14年間メジャーに在籍。1995年にはホームラン王になったダンテ・ビシェット氏である。目標は言うまでもなく父に続いてメジャーリーガーになること。「3歳でバットを振り回し始めてから、ずっとそう思っていた」のだという。






 米国の高校野球に全米王者を決める大会はない。州の王者が最大のタイトルになる。ビシェット選手ももちろん、フロリダ州選手権の優勝を目指している。「高校で野球をやっている以上、州選手権は最大の目標さ。でも、それには個人のレベルアップが必要だと思う。自分自身が最高のパフォーマンスをすればチーム力向上になるはずだ」との考えを示した。母校の勝利のために戦うことと、自分自身がスカウトの目に留まることは、まったく矛盾しない、それぞれが大切だということなのだ。

野球の他にバスケットボールもプレーする  クラウス投手。
 カリフォルニア州ダナヒルズ高校のハンス・クラウス投手は、日本流に言うとこの9月から高校2年生。ドラフト対象になるまでにまだ2年ある。193㌢で82㌔とまだ線が細いけれども、右腕から投げ下ろす150㌔を超える速球で、現時点で全米高校ナンバーワン投手というスカウトもいるほどの逸材だ。兄も150㌔の速球を投げる右腕投手で、今年6月のドラフトでブルージェイズから11巡目(全体332人目)指名を受けたが、拒否して南カリフォルニア大に進む。「卒業までまだ2年あるから、進路はじっくり考える。最終的にはメジャーリーグの先発投手になりたい」と夢を話した。


捕手の魅力を「ゲーム全体を見渡しリーダーでいることを楽しめる」と語るジョンソン捕手。
 エリアコード・ゲームズの参加者は誰もが自信満々でやって来る。強肩が自慢の捕手、イリノイ州カーメル・カソリック高校のクーパー・ジョンソン選手もそうだった。「イリノイ州の小さな街から来た僕は、全米から集まった最高の選手たちを見て刺激を受けているし、謙虚な気持ちにもなっている。もっともっと考えて野球をしなければならないと痛感している」。大きな収穫を手にしたようだ。







 会場にいたパイレーツのスカウトは「この大会に来るのは8度目。われわれにとってはとって、ありがたい催しだ。現時点の高校生を見るポイントは体格とスピードとパワー。目星をつけた選手を、今後さらにチェックしていくことになる」と言う。米国のエリート球児は日本の高校生とはまた違った熱い夏を送っている。


前回:【アメリカで開催される「もう一つの高校野球」】選手サポートに掛けるメーカーの思い
前々回:【アメリカで開催される「もう一つの高校野球」】全米のエリート高校球児集結!


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