学校・チーム

【市ケ尾】保守的思想からの脱却、外部コーチと6人の指導者が支える公立進学校

2025.9.29

間違えていた「自主性の取り扱い」

その年の年末には、私費を投じてドミニカ共和国を訪問。ドジャースの施設を見学するなど探求心を深める。コロナ禍明けの2021年からは米・独立リーグでプレーし藤沢市で野球塾「Perfect Pitch and Swing」を運営している長坂秀樹氏や、スポーツジャーナリスト・氏原英明氏とコンサル契約をして定期的にチームを見てもらった。月4000円の部費の中から、工夫とやりくりで捻出した。

「外部の方から助言をもらうことで『自主性』の取り扱いを間違えていたことに気づきました。それまでは、基礎的な練習量を確保せずに、自主性に委ねていたのです。氏原さんから言われたのは『市ケ尾の野球部に入る生徒は、中学時代に本格的な野球を教え込まれていない。そこから自主性に任せても、練習量は足りていない』と。練習の質と量を改善したら2022年春に初めてベスト16に入り、夏のシード権を取ることができました。この快挙は長坂さんと氏原さんのおかげです」

2023年はエース木澤卓也投手(現日大/軟式野球部)を擁して春夏ベスト16。夏は甲子園出場経験のある私学に初めて勝利することができた(4回戦、法政二に7-6)。目指す指針が上方修正され、2024年夏、2025年秋もベスト16入り。安定した戦績を収める「公立の雄」の一つとなった。
「ここからもうワンランク上のステージで戦いたい。ベスト16で満足するチームになりたくないのです。『市ケ尾に行けばベスト16に入れるんでしょ』というような気持ちで練習している選手がいたときは、本気で怒っていますから」。

菅澤監督は「甲子園」という夢を否定しないが、現実的な目標設定を重視している。練習では頻繁に「自己実現」という言葉を使う。自分で決めた目標に向かって、そこに行くまでのプロセスを全選手が共有して、やり抜いてほしいという考えだ。チームの目標は選手たちに考えさせている。

「新チームが始まった時、選手たちが決めた目標は『5回戦で勝つ。ベスト8入り』でした。チームスローガンが『〝執〟大成。最強最高への挑戦』。選手たちは、市ケ尾が初めてベスト16入りした2022年の48期と、歴代最強だった2023年の49期の先輩を超えることを目標にしています。 夏を経験したメンバーが9人残っているので、この代は楽しみなチームなんですよ」。

来年で就任10年。「初戦突破」が誇りだったチームを、県内有数の実力校まで引き上げ、公立校の可能性を大きく広げた菅澤監督。悲願のベスト8入りへ向けて、キャリアハイを目指す選手たちと節目を迎える菅澤監督。「〝執〟大成」の言葉には、特別な思いが込められている。(取材・文・写真:樫本ゆき)

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