過去にも2度、冬の期間に行っている練習を紹介した花咲徳栄。その時は砂場の上で行う「アトム」と呼ばれるトレーニングや重くて長い鉄の棒やハンマーを使ったメニューにかなりの反響があった。コロナ禍を乗り越えて現在のチームはどんな狙いでこの時期の練習を行っているのか。1月の花咲徳栄の練習を取材した。
2017年には埼玉県勢として初となる夏の甲子園優勝を果たすなど、関東でも指折りの強豪となった花咲徳栄。大会での成績はもちろんだが、昨年も藤田大清が日本ハムから育成1位で指名を受け、これで高校としては史上最長となる8年連続のドラフト指名という快挙を達成している。全国でも有数の勝利と育成を両立しているチームと言えるだろう。
また高校時代は控えだった選手も長谷川威展(金沢学院大→2021年日本ハム6位)、松井颯(明星大→2022年巨人育成1位)が大学を経由してプロ入りを果たしている。このように選手が育つのにはどんな理由があるのか。チームを指導する岩井隆監督に話を聞いた。
「まずは自分の基本となる技術の軸をしっかり身につけることじゃないですかね。ピッチャーでも野手でもそれは大事だと思います。中学時代から色んな人に色んなことを教わっていて、一見すると器用に見える選手もいますけど、そういう選手も意外と基本的なことができていないことが多い。基本となる動きを身につけるためにはやっぱり量をこなす必要がありますし、量をこなすためには当然体力も必要になってくる。松井(颯)なんかも高校時代からやるべきことはコツコツやる選手でした。そういうことに腰を据えて取り組めるのはやっぱり公式戦のない秋から冬の期間だと思います」
反復練習のための体力はトレーニングで養うというのはもちろんだが、それだけではなく休養も大事にしているという。しっかり食べてしっかり睡眠をとるように、12月の期間は夜間練習を禁止にしていることも、そういった理由からだ。
花咲徳栄の練習で特徴的なのは足袋を履いて行うということだ。岩井監督が花咲徳栄のコーチに就任した時点で前監督の稲垣人司監督(岩井監督が桐光学園でプレーしていた時の監督でもある)が既に取り入れていたことで、すっかりチームの伝統となっている。
足袋を履いて練習することでピッチング、バッティング、守備の全てにおいて足の指でしっかりと地面をつかむ必要があり、そのことで下半身の安定感やプレーの瞬発力がアップするという。
また以前は冬の期間だけライトのファウルゾーンに作っていた砂場を、今では外野のライトからレフトの間に常設するようになり、1年を通じて使用するようになったという。それにはトレーニングによる能力アップだけでなく、故障を防ぎたいという岩井監督の狙いがある。
「高校野球で一番痛いのが怪我ですよね。2年半しかないのに怪我をして数カ月リハビリということになると、かなりのマイナスになります。柔らかい砂の上を走る方が足への負担も小さいということで砂場も常設にしました。怪我なくしっかりトレーニングすれば体は確実に成長します。うちの選手を見ても1年生と2年生では体格が明らかに違いますからね。徳栄の選手はトレーニングにもしっかりついていけるというのも、プロが評価してくれているポイントかもしれませんね」