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自信満々の配球が打ち返される理由は、捕手の構えるタイミング!?

2014.12.10

時代とともに常識が変化する野球。どれだけ時代に柔軟な対応ができるかが求められ、10年前には“あたりまえ”だと指導されてきたことも、今では実践するのに不向きでおすすめできないものが少なくない。今回はその1つ、捕手の“構えるタイミング”を再検討したい。


的ではなくなったキャッチャー

 ここ最近で解釈が変わってきたプレーとして、捕手がミットを構えるタイミングが挙げられる。従来、ピッチャーがセットしたときからミットの面をピッチャーにハッキリと見せ、狙いを定めさせるべきだとされていた。要求するコースにきっちり投げてもらうためにも、早々に“的になる”ということだ。一方、ピッチャーが投球モーションに入るギリギリまで構えないキャッチャーは、ピッチャーのことを考えていない“ダメなキャッチャー”と言われていた。

 しかしながら現代において、プロも大学・高校野球も、早く構えるキャッチャーはほとんどいない。早く構えることで、要求したコースがバッターにバレてしまう、というのが主たる理由だ。

 なぜ、構えが早いとコースが打者に伝わってしまうのか。答えはシンプルだ。けっして、ランナーコーチやベンチ内の選手がキャッチャーの構えを見て、声で伝達するというダーティーな策を講じているからではない。キャッチャーの動作から出る“音”が、バッターに聞こえることで、コースを教えてしまっているからだ。さらにある程度の経験を積んだ打者なら、コースがわかれば、球種をも読み切れる。音を発することで、配球の組み立てに問題がないにもかかわらず、バッターにまんまと打ち返されてしまうのだ。


名捕手は気配を消せて、無言で想いを伝えられる

 キャッチャーが出す音の代表といえば、足音が挙げられる。捕手エリアの真ん中でピッチャーへサインを送り、やがて左右の要求したコースへ動くとき、当然のことながらキャッチャーはすり足で動くためスパイクがグラウンド上を滑る音が出る。これが意外に大きく、足音が遠ざかるか近づくか、それだけでバッターはコースを容易に予測できてしまう。

 “足音”で打者にヒントを与えないために、はじめは要求と反対のコースへステップを踏み、投手がモーションに入ってから、要求したコースへ再度ステップを踏み直すキャッチャーがいる。こうすることでバッターの音による推測を遅らせたり、誤らせることができる。ただし一長一短で、左右へ忙しく(せわしく)動くことでピッチャーの集中を散漫にしてしまうおそれもある。

 足音のほか、キャッチャーの“元気の良さ”が仇となることもある。大きな声でピッチャーを鼓舞するのはいいが、コースに構えながら声を発してしまえば、足音以上に音の遠近がバッターに伝わってしまう。また声だけでなく、構える前にミットを叩く音も同様だ。プロ野球のキャッチャーがジェスチャーで投手に何かを要求したり、ミットを叩かないのはそのためだ。

 こうした“音”による配球漏洩を防ぎ、なおかつピッチャーの集中を損なわないために最も適した行動が“構えを遅らせる”ということなのだ。普段の練習からバッテリーとしてピッチャーとの意思疎通ができていれば、投球時の構えの遅さはさほど問題にはならない。なぜ打たれてしまうのか不思議に思っているキャッチャーは音に気をつけ、構えを遅らせてみてはいかがだろう。



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