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卒業式を迎えたコロナ世代。川和高校“最後のミーティング”

2021.3.14

3月6日、神奈川県立川和高校では卒業式が行われた。県内での指折りの進学校ながら部活動も盛んで、野球部も2015年秋に激戦区神奈川で準々決勝進出を果たすなど、コンスタントに結果を残している。例年であれば2月中に野球部最後の行事として卒業する3年生と新チームによる引退試合が行われているが、今年は緊急事態宣言下ということで延期。卒業式後に3年生がグラウンドに集まり、“最後のミーティング”を行うこととなった。


前例がない中で最後まで野球をやり切ったこと誇りに思う



卒業式は午前中から行われていたが、昨年から密を避ける意味もあって3年生のみが出席。しかし運動部在校生の有志によって、グラウンドには応援旗などが設置され、3年生の退場を見送る姿が見られた。

野球部の伊豆原真人監督は川和に就任して8年と学校内でも古株の教員であるが、年々部活動同士の横の繋がりも強くなり、野球部の夏の大会前には他の部活動がエールを送る姿なども恒例になっているという。昨年から在校生が卒業式に出席できない事態となったが、このようなエールも生徒たちが自発的に行動して生まれたものとのことだった。



卒業式後のホームルームが終わったクラスから徐々に野球部員もグラウンドに集合。前述したように県内屈指の進学校ということで、野球部員も卒業後は受験勉強一色の日々を送っており、何人かの選手に話を聞いたが、1日10時間以上は勉強していたとのこと。グラウンドに到着すると伊豆原監督に難関私立大の合格を伝える部員も多かったが(後日国公立大の合格発表もあり、今年は野球部から東大現役合格者が誕生)、監督からは「(他の先生や生徒から聞いて)もう知ってるよ。なんで直接すぐ言いに来ないかな(笑)」などという言葉も聞かれたが、こんな会話が出るところにも野球部の雰囲気の良さがよく表れていた。また合格の話を聞く終始笑顔の伊豆原監督の表情も印象的だった。



今年の3年生は選手20人、女子マネジャー1人の合計21人で、全員が揃ったところで最後のミーティングがスタート。伊豆原監督からは「この1年間は野球だけでなく、生活すべてにおいて今までにない未知のことを経験してきました。普通、高校生は先輩たちのやってきたことを参考にしてあらゆることに取り組みます。去年はこうだったから今年はこうしよう。でもこの1年はそんな前例がない中で、自分たちで道を切り開く必要があった。そんな中でも最後まで野球をやり切って、高校生活を終えたこと、それだけで十分自信を持っていいと思います。大人の私が見ていても純粋に凄いと思いましたし、誇りに思います。尊敬します」といった言葉がかけられた。



その後、監督から3年生への手紙と、毎年渡しているというボールを一人一人に手渡してがっちりと握手。ボールは選手本人と保護者の方に向けてということで毎年2個ずつ渡しているとのこと。受け渡しの時に思わず握りそこない、落としてしまう選手もいたが、受験で縁起が悪いということもあって、すぐに“落ちていない”ボールに取り換えていた。またこの3年生への手紙は3月18日に発売となる「監督からのラストレター 甲子園を奪われた君たちへ」(インプレス)の企画で、伊豆原監督が3年生へ送った内容を封筒に入れたものだったが、形に残るものということで喜んでいる選手も多かった。



その後3年生が揃って記念撮影。終わった後は学校内のイベントがあるということで慌ただしく解散となったが、3年間の学校生活を全うした野球部員の表情からは清々しさがにじみ出ていた。また忙しい時間を縫って、10人の選手には現役球児へのメッセージを書いてもらったが、やはり仲間との限られた時間を大切にしてほしいという内容が目立った。

伊豆原監督の話にもあった通り、今までにない異例の1年間だったが、この経験が将来に生かされることも多いだろう。川和高校は将来の日本、国際社会のリーダーとして活躍できる人材の育成に取り組むことを掲げているが、今年の野球部の卒業生からもあらゆる舞台で活躍する姿を見せてくれることを期待したい。

(取材・文・撮影/西尾典文)


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