今や甲子園常連校となった健大高崎高校と花咲徳栄高校野球部 他のトレーナーを務める、塚原謙太郎氏のトレーニングセミナーが9月5日に開催された。30名を超える野球指導者たちが参加し、強豪校で導入されているトレーニング現場の話で盛り上がった。最終回は「運動脳を鍛えるシナプソロジートレーニングのドリル」
■声を出しながら身体を動かすことが脳を活性化させる
当日のセミナーでは、7つのドリルを参加者自身も体験。まずは初歩的なドリルとして、指示者が挙げたどちらか左右の手を瞬時に判断して、声に出しながらその方向に移動。徐々に慣れてきたら、指示者が挙げる手の指が偶数だったら右、奇数だったら左などの制限をつけて反応させる。参加者も徐々に判断するのが難しくなる様子がはっきりと分かり、いかに脳と身体を同時に動かすことが難しいかを体感した。このときに特に重要なのは、必ず自分が動く方向や偶数・奇数など指示されたものを声に出して身体を動かすこと。声に出すという行為が脳を活性化させる重要なポイントであるということも塚原氏から説明された。
■ドリル例「条件付きスタート」
※1対1でも、1対複数人でも実施可。
◆ベースの動き
実施者は、指示者と向かい合い、目をつむる。
実施者は、指示者の「ハイ!」の合図で目を開き、(実施者から見て)指示者が手を挙げている方向にスタート。
スタートする際に、スタートする方向を「右!」「左!」と発声。
(例:指示者が(実施者から見て)右に手を挙げている⇒実施者は「右!」と発声して、右にスタート)
◆スパイスアップ①
ベースの動きに対し、実施者の発声が逆になる。動きは同じ。
(例:指示者が(実施者から見て)右に手を挙げている⇒実施者は「左!」と発声して、右にスタート)
◆スパイスアップ②
ベースの動きに対し、実施者の動きが逆になる。発声は同じ。
(例:指示者が(実施者から見て)右に手を挙げている⇒実施者は「右!」と発声して、左にスタート)
◆スパイスアップ③
今度は、指示者が右手を挙げていたら右へスタート。左手を挙げていたら左へスタート。
指示者は後ろ向きになったり、手の角度を色々と変えたりして、指示を変化させる。
(例:指示者が右手を挙げている⇒実施者は「右!」と発声して、右にスタート)
※スパイスアップとは、ベースの動きが慣れてきたら、徐々に違う動きを取り入れていき、変化させていくこと
今回、塚原氏からは主に健大高崎で導入しているトレーニングアプローチの手順と運動脳を鍛えるトレーニングについて具体例を基に紹介された。その中でも特に興味深かったのは、「ケガをしない身体づくり」という目的がしっかりとあり、それに向けて一つ一つ着実なステップを踏んで選手たちを鍛えていること。また、全ては「勝つために」様々なトレーニングが考えられていることであった。選手の成長というのは一気に飛躍するものではなく、小さな鍛錬の積み重ねがもたらすものだと、改めて実感できるセミナーであった。
(シナプソロジー問い合わせ:シナプソロジー普及会)
第1回記事:甲子園強豪校のトレーナーが語る、身体づくりのアプローチ法とは?
第2回記事:健大高崎の機動破壊を生む、コーナーリングと判断する脳