学校・チーム

【連載】センバツ出場を果たした、進学校公立野球部の今(3)

2016.7.14

 


センバツの大舞台を経て、野球部に生まれた大きな変化

 プラスの変化は、打撃力の向上だ。新チーム発足当初から打撃面には課題が残るチームだった。しかし、選抜での経験を活かし、ボールの見極め、好球必打の理念で得点力は大きく改善した。これまで何点も点を重ねるという試合は稀だったが、練習試合でも得点力は格段にアップした。
特に目につくのが、三振率の少なさだ。センバツ出場校の中でも、平均三振率の低さは1位。強打の打者がいるわけではないが、少ない得点機を確実にモノにする狡猾さが加った。

 一方で、選抜前には見られなかった亀裂が生まれたのがマイナス面だ。

 大きな注目を集めた大舞台だけあって、甲子園後は燃え尽き症候群のような状態が続いた。1ヶ月、2ヶ月と時間が経ってもその傾向は抜けず、思うような結果が残せない日々が続く。そこで目立つようになったのが、3年生と2年生の間での軋轢だ。チームの方針として、実力が同程度であれば下級生も積極的に使っていくという考えがある。現在のレギュラーメンバーの顔ぶれを見ても、3年生で名前を連ねるのはエースの園田とキャプテンの三宅のみ。主力となるメンバーの大半が2年生で、1年生でベンチ入りを果たした部員も存在する。

 永井監督は甲子園を経た変化についてこう話す。「ウチは実力主義で学年は一切関係ないという考え。ただ、試合に出られない3年生達は人一倍野球に対して熱い想いを持っている。甲子園に出たことで、その熱の違いが明確になってきた。レギュラーの2年生達にその必死さがあるかというとまだまだ足りない。1点差を争うような接戦の試合では、その気持ちの差がちょっとしたプレーにも現れてきますから」

  センバツ後に訪れる暗雲。春季大会以降は1点差のゲームをことごとく落とす

 春の県大会では、高砂高校から6点を奪い夏のシード権を獲得するが、次戦の姫路南ではリードを守れずに9対8で逆転負けを喫する。練習試合でも、ミスの失点から1点差での敗戦という結果に、永井監督も檄を飛ばした。キャプテンの三宅も、「センバツ後にこれまでにない(?)チーム全体の気のゆるみが見られるようになってきました。更に点がとれるようになったことで、悪い意味で変に自信を持つ選手が出てきるようになった。その部分でこれまでにないミスや、やらないといけないことを途中でやめたりするプレーが目につくようになった。結果、1点差の試合をことごとく落とすという負のスパイラルに陥りました」と振り返る。

 だが、夏の大会を一ヶ月後に控えた6月中旬から変化が生まれ始める。部員達に話しを聞いても、絶対的エースである園田に“甲子園に連れていってもらった”という声が多かった。だが、その園田含め、赤木裕貴や吉田仁承といった主力に負傷が続いたことで、2年生選手たちの自覚が芽生え始めた。“園田に頼らずにも勝てるチームに”。チームが標榜するスローガンの通り、全員野球の精神で練習試合では強豪を相手に接戦を制していく。
特に2番手投手の2年生左腕・今井春樹は投球に力強さが加わり、才能の片鱗を見せ始めている。捕手の吉川も「園田さんの調子が良くなくても、リードや打撃面でカバーしてチームで戦う必要がある」と強い責任感を見せるようになる。

 夏の初戦の相手は、昨秋にコールド負けをくらった六甲アイランドと厳しい相手となる。だが、園田の復調とチーム力の底上げがうまく噛み合えば再び夏に長田旋風が起こっても不思議ではない。甲子園を経て、良くも悪くも変化が生まれた長田野球部。その変化が何をもたらすのか。その答えは、まもなく始まる夏予選での戦いぶりで明らかになる。



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