初代校長が唱えた『大家族主義』
では、新宿高の伝統とは――?
「たくさんありますが、一番は初代校長の阿部宗孝先生が掲げた理念『大家族主義』です。生徒・教職員・保護者・卒業生が家族のように一体となり、力を合わせて、目標に向かって取り組んでいく。その象徴となるのが、創立時から続けている館山での大遠泳。1年生の夏に行う臨海教室で、全生徒が1時間~1時間半かけて泳ぎ切る。入学時には4メートルしか泳げなかった生徒が、2キロ近くの距離を完泳することもあります。ひとりでは泳ぎ切れない距離でも、仲間、先輩、教員が声をかけ合うことで、泳ぐことができる。生徒の力に驚かされます」
田久保監督は、新宿高に赴任したときから大遠泳の責任者を任され、「毎年とてつもないプレッシャーがかかり、髪の毛が真っ白になりました」と、白髪に手をあてながら笑う。
新宿高校館山寮には、第1回からの遠泳の写真が飾ってあり、「館山に行けば、100年分の伝統がつながる。100年分の時間を縮められる魔法の場所です」と誇らしげに語る。
ここ2年は新型コロナウイルスの影響で遠泳ができていないが、この夏は実施予定とのこと。6月から校舎の屋上にあるプールで、遠泳に向けた練習に入る。
さらに、創立時から続く校訓が『自主自律』『全員指導者たれ』。田久保監督が担任を務めるクラスでは、新宿高伝統の「週番」を採り入れ、一人ひとりの生徒に自覚と責任を与えている。
後編に続きます。(取材・文:大利実/写真:編集部)
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