企画

高校野球は投手力?控える投手の重要性と継投のタイミング

2014.9.22
 すでに全国各地でセンバツをかけた秋季大会がスタートしている。ただ、新チームは産声をあげてまだ2ヶ月程度。旧チームから主力として出場していた選手を除き、監督も半ば手探り状態で、起用法など考えを巡らせながらチーム作りをしている最中だろう。

 そんな中で、秋季大会ではとりわけ投手力が重要だとされる。もちろん、チームの投手陣の中でエースが頭ひとつ抜けていて先発完投してくれれば、試合を組み立てるのに悩みはない。しかし、エースの投球過多はケガにつながりやすく、連投も未知数なことが多い。高校野球ではプロ野球のように分業制(先発・中継ぎ・抑え)を敷くのは難しい以上、カギを握るのは“2番手投手”の存在だ。
 今回は、控え投手の重要性と、その起用のタイミング(継投)について考えてみたい。

エースがすべてではない!

 エースが好投手だからといって、それだけで勝ちにつながるほど甘くはない。先発したエースが何かの拍子で崩れてしまえば、敗色濃厚になってしまう。だとすると、後ろに控えている投手がどれだけ実力を蓄えているかが重要になる。

 今夏の選手権大会を例に考えてみたい。大会2日目第4試合、藤代(茨城)と大垣日大(岐阜)の一戦では、大垣日大のエース・高田航生(3年)が初回8失点を含む5回途中10失点で降板した。エースが崩れ、大勢は決したかに思われたが、リリーフした滝野要(3年)が好投。テンポよく投げ込んでその後を無失点に封じ、自軍に流れを呼び込んで逆転勝利へ導いたのだ。

 滝野は春、背番号5をつけながら4番打者・ピッチャーとして東海大会で先発し、夏の岐阜大会でも先発・リリーフ合わせて3試合に登板していた。滝野は中学時代に投手経験があったとはいえ、高校では投手業と無縁だったが、高田の故障もあり、阪口慶三監督が英断。春からの数か月間で滝野を“第2のエース”として育てていた。だからこそ、甲子園で勝利を呼びこむ投球がなされたのだ。

 三重(三重)の背番号12・森竜之介(3年)も同様だ。大会3日目第4試合、広陵(広島)との試合で延長10回から登板し2イニングを好投。11回サヨナラ勝ちに貢献した。

 三重には不動の大黒柱・今井重太朗(3年)がいたため、森は昨夏の新チーム発足以降、県大会レベルの公式戦登板はなく、その存在は周囲に知られていなかった。もしここで森が努力することをやめてしまえば、甲子園での好投はなかった。森は努力を重ねて成長し、練習試合で県外の強豪校相手に結果を残して自信をつけた。その結果、夏の三重大会前には中村好治監督が“秘密兵器”と称するまで成長し、大舞台でもくろみどおりの活躍をしたのだ。

 プロ野球のように分業制とまではいかなくとも、いつでもどこでも投げられる投手が控えているチームは強い。やはり“継投で戦える投手力”は必要なのだろう。


今夏の甲子園で大阪桐蔭西谷監督が行った投手交代とは

 また、良い投手が複数いても、それぞれが実力を発揮できなければ勝利には当然つながらない。投手起用は難しいと言われるが、とりわけ継投で投手が試合途中からマウンドへ上がることに関して、今夏の選手権大会で大阪桐蔭・西谷浩一監督が、初戦の開星(島根)戦後、興味深い言葉を口にしていた。

 「継投は6回からと決めていた」
 「グランド整備後でマウンドがキレイにされている」

 この試合、先発したのは背番号10の田中誠也(2年)。初回に4点を失う厳しい立ち上がりだった。スムーズに抑えるイニングもあったが、その後もピンチを迎える苦しいピッチングが続いた。6回表、田中に代打が送られると、ちょうどこの回にチームは逆転。その裏からエース・福島孝輔(3年)がマウンドへ上がり、4イニングを1失点に抑え勝利をもたらしたのだ。

 この継投の場合、西谷監督はイニングの頭というポイントに加え、キレイなマウンドの方がよりベストピッチングができると考え、“グランド整備後”というタイミングでの起用策が胸の内にあった。くしくもチームは逆転に成功したが、そこでエースが登板という上げ潮ムードの中、グラウンド整備後という“仕切り直し”のタイミングでマウンドへ送られた福島も気分よく役目を果たした。

 継投のタイミングとして、こうした“イニングの頭から”というポイントのほか、「比較的、気持ちが楽なところから登板させたい」(愛知県内の監督)と“下位打線”に合わせた継投が企てられるシーンも。根拠をもった継投は、やはり成功することが多いように思う。


PICK UP!

新着情報