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【高校野球コラム】初優勝を飾った愛知県の誉高校、東海大会上位進出のカギは?

2014.9.26
センバツ出場をかけた戦いが繰り広げられる秋季大会。愛知県では、誉高校が初優勝を飾った。誉は昨秋も県大会でベスト4に入り、数年前にはドラフト育成枠でプロ選手も輩出しているが、一般的にはあまり知られていない。この新鋭校を戴冠に導いたのが、エース左腕の内田大貴投手(2年)だ。

新鋭校を引っ張る左腕・内田大貴投手

左打者を封じたアウトコース主体のピッチング

 今大会、左打者との対戦数が内田にとって追い風となった。決勝で対戦した愛工大名電はスタメンに左打者が7人いた。準々決勝での対戦となった豊田西にも7人、ベスト16で戦った東邦にも7人の左打者がいたのだ。内田の左打者に対してのピッチングは見事なものがあった。

 甲子園常連校である東邦戦と愛工大名電戦。内田は左打者に対してインコースへの球はほとんど使わず、キレのあるストレートと変化球を丁寧にアウトコースに投げ込んでいた。両試合で左打者から、空振り三振をストレートと変化球で各3つずつ(計6つ)、見逃し三振をストレートで3つ奪っている。アウトコースいっぱいの球は、ストレート・変化球ともにバッターからは遠く見え、振ってもバットが届かないコースへ次々と投げ込まれていた。

 東邦・豊田西・愛工大名電との試合で、スタメンの左打者21人に10本(内野安打を除く)のヒットを打たれたが、このうち9本が左中間より左方向で、長打も2本でとどめた。打たれた長打が少ないこと、引っ張った打球がほぼヒットにならないということからも、内田のアウトコースへの制球力の高さがうかがえる。なにより、相手バッターに気持ち良くスイングさせないピッチングをすることが自軍へ流れを呼びこんだ最大の要素ともいえるだろう。


上位進出のカギは「配球の工夫」

 ただし愛工大名電は、噂の好左腕・内田を攻略すべく、左打者が工夫をしていた。それは打席内でホームベースに近づき、かつピッチャー寄りに立つことだ。内田のアウトコースへの球に対し、リリースからキャッチャーミットまでの角度がつく前に少しでも早く打ち返したいという意図だろう。変化球のキレが落ちたり、ストレートが甘く入るようなら、この対策は効果てきめんとなるが、実際、愛工大名電の左打者は初回からレフト前へ2本のヒットを放った。

 内田が東海大会で上位に進出するには、配球を工夫できるかがカギとなりそうだ。具体的なポイントは2つある。まずは、緩急を使ったピッチングをすることだ。バッターが打席の前(ピッチャー寄り)に立つということは、それだけピッチャーとの距離が短くなり、その分ストレートで詰まらせることも可能になる。緩い変化球の後にストレートを投げ込むことで、よりストレートを速く感じさせ、相手の対策の効果を半減させられる。

 次に、愛知大会ではほぼ投げなかったインコースの活用が必須となる。相手バッターが打席の前方に立つ対策を敷いてきたとき、インコースをえぐることで、打者をハッとさせ、その目線をずらすことができる。同時に、アウトコースの球を、より遠く、角度がついていると錯覚させられる。こうして打者の目線をずらしながら、打者の胸の内にある狙いのゾーンにも微妙なブレを生じさせて、凡打に繋げていけばよい。

 各県代表の強豪校相手に“巧みな投球術”を内田が見せることができるか、今秋愛知大会で躍動した左腕の東海大会での戦いぶりに注目したい。


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