選抜準決勝、勝っても残った後悔
前編ではレギュラーメンバー以外にも区別なく全力で指導するスタイルは昔から変わらないと話していた大角監督だが、その根底にはやはり選手に成長してもらいたいという気持ちがある。
「今年の春の選抜、準々決勝で今朝丸(裕喜)が大阪桐蔭を一人で抑えて勝ちました(4対1で勝利)。ずっと間木(歩)と2人で競い合って来たので、準決勝は間木が先発して中央学院を相手にしっかり抑えてくれていました。2点リードして9回二死からツーベースを打たれて二・三塁になった。一打同点の場面。そこで迷ったんですけど今朝丸に交代して、最終的に抑えて勝ちました。ただ準々決勝は今朝丸が一人で投げ切ったということもあって、間木も次は自分の番だという気持ちが強かったと思うんですよね。あそこで間木に任せて抑えて勝っていたら、もっと成長の機会になったのかなという気持ちはあります。だから試合が終わってからは間木にもそう言って謝りました。ただ、間木も選抜前に自分の不注意で足首を怪我して、それで出遅れたというのもあるんですけどね(笑)」
試合に勝っても選手の成長の機会を奪ってしまったという点で後悔しているというのが、大角監督の考え方をよく物語っている。
報徳学園は野球部専用のグラウンドはなく、他の部活と共用で練習を行っており、それも伝統になっているという。環境面ではたしかに恵まれない部分はあるかもしれないが、高校で勝つだけでなく、その先を考えた指導が根付いており、それが近年の好結果とOBの活躍に表れていると言えそうだ。(取材・西尾典文/写真・編集部)
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